福岡市長選リポート<城南区>老いゆく街、大学が支える 福大生が高齢者宅訪問

西日本新聞

傾聴の練習をするメンタルサポート研究会のメンバー

 12日、福岡市城南区七隈の福岡大の教室に、学生たちの明るい声が響いた。看護学科の学生約30人でつくるサークル「メンタルサポート研究会」による「傾聴」の練習だ。

 傾聴とは、カウンセリングで相手の気持ちに寄り添い、共感しながら聴く技術。学生たちは月1回、七隈校区で1人暮らしをしている高齢者4人の家を2人一組で訪問している。約1時間のおしゃべりをより楽しんでもらおうと訓練しているのだ。

 この日のテーマは「今、不安に思っていること」。3~4人のグループで、聞き手と語り手、客観的な助言役に分かれて意見を述べていく。相手の言葉を繰り返したり、要約して確認したりして、会話を進めていく。研究会のリーダーで、同大2年の高園愛美さん(20)は看護師志望。「気持ちをうまく引き出せるようになりたい」と力を込める。

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 城南区の人口は約13万人。市内7区で最も少ない。2017年10月1日の統計によると、65歳以上が22・8%を占め、全区の中で高齢化率が最も高い。一方で、20~24歳の若者の割合も市平均の6・8%を大きく上回り、全区の中で最高の9・1%を占める。

 若者人口を押し上げるのが九州最大、約2万人の学生数を誇る福大だ。「3割は市内から通っている」と大学広報課は説明する。

 城南区民にとって福大生のイメージは少しずつ変わり始めている。城南区企画共創課の担当者によると、かつては「夜まで騒ぐ」「ルールを守らない」などの苦情が地域から上がっていたが、最近は「地域行事に出てくれる」など、歓迎する声が広がっているという。

 その要因の一つが福大の地域貢献への姿勢。14年から10年間のビジョンでは、四つの重点項目の一つに「福岡を中心とする地域の活性化と発展」への貢献を掲げた。昨年は住民、城南区役所とともに初の災害避難所開設訓練を同大体育館などで実施した。

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 メンタルサポート研究会の高齢者宅への訪問活動は、福大が老いゆく街を支える取り組みといえる。

 2009年、当時の学生たちが「独りぼっちの高齢者ゼロ作戦」の名前で企画し、七隈校区が受け入れた。同校区民生委員児童委員協議会の谷村幸子会長は「見守る人は多い方がいいと思った」と説明する。

 お年寄りの気分転換になるだけでなく、訪問した学生が冷蔵庫の故障に気付いたり、詐欺を未然に防止したりしたこともある。サークルメンバーは公民館に出向き、健康をテーマにした出前教室も開いている。

 課題は、数年間で学生が入れ替わる中での活動の継続性。「若者ならではの気付きがある。できる限り続けてほしい」。谷村会長は若い力を頼りにしている。

=2018/11/14付 西日本新聞朝刊=

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