会計検査院報告 増税前に歳出の総点検を

西日本新聞

 相も変わらぬ「親方日の丸」意識と言わざるを得ない。私たち国民が支払う貴重な税金を一体何と心得ているのか。

 会計検査院が2017年度の決算検査報告を安倍晋三首相に提出した。税金の使い方に問題があると指摘されたのは374件、総額1156億円に及ぶ。

 税金や社会保険料の徴収不足のほか、工事や物品調達に要した過大な支出▽補助金の多過ぎる交付▽不適切に管理されている債権▽有効活用されない資産-など国民から見れば「あきれた税金の無駄遣い」の数々だ。

 例えば、国宝や重要文化財に指定されて一般公開もされている建造物の耐震対策(文化庁の補助事業)を調べたら、耐震診断で「性能不足」と危険性を指摘されたのに、1年以上補強していない建造物が5棟あった。

 緊急性を判断するための予備診断で「耐震性に疑義あり」とされた423棟のうち、約9割の373棟は本来必要な耐震診断を怠っていた。税金を投入した耐震対策の実効性を疑わせる事例と言えよう。

 また、航空自衛隊千歳基地(北海道)や横田基地(東京)の周辺で騒音対策として設置された緩衝地帯(国有財産台帳価格で計15億円余)は近隣住民らが菜園などに利用していた。国有地のずさんな管理は目に余る。

 今回の検査報告で注目に値するのは、国民の関心が高い年金制度に踏み込んだ点だ。検査院は、公的年金の給付を抑制する「マクロ経済スライド」を制度導入の2004年度から完全実施していたと仮定すれば、基礎年金の国庫負担分は16年度までの累計で3兆3千億円削減できた-との試算を公表した。

 この制度は給付額の上昇率を賃金や物価の伸び以下に抑える仕組みだが、デフレ下では適用されない。このため、実際に発動されたのは15年度の1度だけだ。年金で暮らす高齢者に配慮する措置だが、給付額が高止まりして年金財政を圧迫する要因の一つとも指摘される。

 もちろん、この問題は一連の「無駄遣い」とは次元が違う。

 しかし、人口減少と少子高齢化が進む中で、年金制度と年金財政を持続可能とするためにはどうすべきか-という議論の具体的な問題提起となり得る。

 検査院は「社会保障の負担と給付の在り方等について国民的な議論の下での検討」を政府に求めた。私たちも同感である。

 政府は来年10月に消費税率を8%から10%に引き上げる予定だ。「無駄遣い」の一掃は増税の大前提だ、と声を大にして言いたい。その上で、膨張する社会保障費や防衛費なども「聖域」扱いせず、歳出の総点検を改めて政府に求めたい。

=2018/11/18付 西日本新聞朝刊=

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