大学入学共通テスト 試行調査を分析する(上)

西日本新聞

【図1】記述式問題の出題の変化 拡大

【図1】記述式問題の出題の変化

【図2】国語の記述式問題「総合段階」の判定表 【図3】現代社会の第1問 河合塾の室崎欣彦・西日本本部本部長

 2020年度から大学入試センター試験に代わって導入される大学入学共通テストの試行調査が10、11日、全国で行われた。国語、数学で出題された記述式問題の特徴や、各科目の特色ある設問について大手予備校・河合塾の協力を得て分析した。

記述式、より簡略化

 思考力、判断力、表現力を重視する共通テストでは、マーク式に加え、記述式の問題が新たに登場する。昨年11月に実施された1回目の試行調査では、正答率の低さや無回答率の高さが指摘されたことから、大学入試センターは今回の調査で、記述させる内容について指示を具体化、簡略化するなどの工夫を加えた。

 3問出題された国語は、複数の論理的な文章から情報を読み取り、適切に表現できるかを試した。昨年の試行調査では、部活動の規約や学校新聞の図表を示して会話の内容などを記述させた。今回は模擬試験など従来の試験問題でも見かける文章を題材とし、受験生が戸惑わないよう配慮が見られた。

 前回、完全正答率が0・7%にとどまり、センター側も「識別力等の点から課題」とした80~120字の問題は、3~4割程度の正答率を目指し、記述させる内容を整理。2文構成という条件は変わらないものの、2文目の文頭、文末の語句を指定した。設問で「【資料】に示されたメニューの例に当てはめて書くこと」や、書く必要のない内容なども具体的に示した。

 正答条件の項目数が減り、前回より多い三つの正答例が掲げられたことで、自己採点もしやすくなった。

 数学1・Aの記述式は、昨年の試行調査と同様に3問を出題。前回の調査は数式を含んだ文章で答えさせる設問で正答率が2・0~8・4%と低く、無解答も約半数に上った。

 今回はより短い文章や、数式だけで解答させる形式になり、記述量が少なくなった。

国語の記述式、5段階で評価

 今回の試行調査では、国語の記述式問題の評価方法も示された。小問ごとに複数の正答条件が設定され、達成度合いに応じて、まずa~dの4段階で評価。さらに各小問の評価を総合段階の判定表に当てはめて、最終的にA~Eの5段階でみる仕組みだ。

 記述式は今回、第1問の問1~3で出題。問1の場合、「30字以内で書かれている」という形式的な条件が1点、内容に関する条件が2点設定された。3点全てを満たすと最高評価のa、内容に関する2点のみを満たした場合はb、無回答などがdとなる。

 判定表では、解答させる文字数が「80字以上120字以内」と最も長い問3の結果を重視。問3がaならば、問1、問2がbでも総合判定はAとなる。

 センターは大学入学共通テストの本番でも同じ形式を採用する方針で、評価を点数換算するかどうかは各大学に任せる。数学の記述式は、マーク式の出題と同様に配点を設定した。

日常生活の場面を想定

 今回の試行調査では昨年の1回目に続き高校の授業や日常生活の場面を想定した出題が目立った。

 現代社会の第1問は、高校の新聞部による学校新聞の作成=【図3】=を通じて、社会の課題を考える問題。化学では日本料理に用いるだしの成分、地学基礎では台風に関する古い記録を題材にした設問もあった。

 数学1・Aの第3問は、条件付き確率を使い、くじ引きの戦略を立てる問題。太郎さんと花子さんの会話文を参考にしながら解答を類推していく。文章の中には正解のヒントもちりばめられ、読みこなした上で、その情報をうまく処理していく力が問われている。

 図表やグラフなどから複数の情報を比較検討する設問が多いのは、試行調査の特徴の一つ。英語のリスニングの第5問は、米国の大学で講義を受けているという設定。1回しか流れない音声を聞き、ワークシートの空欄に答えたり、情報を読み取ったりする内容で、その都度メモをして確認する技術も求められた。

 マーク式の設問にも工夫が見られた。「すべて選べ」のように、正解の数を示さずに答えさせる設問や、選択肢の中で正解がない場合に「適当なものはない」という解答を選択させるものもあり、「当てずっぽう」は通用せず、思考力を問う姿勢が見られた。
 

「1回目より負担軽減」河合塾西日本本部長・室崎欣彦さん

 今回の試行調査は昨年11月に実施された1回目の方向性を踏襲しつつ、課題とされた点がかなり改善された。国語や生物は問題文の文章量が2千字程度減り、物理や化学では数値の計算が求められる問題が減るなど、受験生の負担は軽減された。問題文の読み取りに必要な時間が短くなり、平均正答率も改善される教科が多いだろう。

 国語の記述式問題は、論理的文章で模擬試験でも出てくるような素材だった。単純に易しくなっただけでなく、自己採点のしやすさも考慮しているのではないか。ただ、解答の一字一句を正確に問題用紙に書き残すことに慣れていない生徒もおり、自己採点の結果にも影響してくるだろう。

 全体の難易度は従来のセンター試験よりも明らかに上がっている。成績上位層は従来の2次試験対策の延長で対応できるが、下位から4割ほどは長い問題文を読みこなすのも難しい印象で、点差が付きにくくなる可能性もある。二極化が進むこと、また私立大で共通テストの参加を見送るケースも考えられる。

 センター試験と比べると、どの教科も知識だけでは答えられない問題が増えている。多角的な視点から情報を整理する力が試されている。そういう点で例えば数学なら公式を知っていることは大前提だが、その成り立ちも理解するなど、資料やデータなどに触れる機会を多く持ち、共通点や相違点を探るような学習が求められる。
 

来週の「教育はいま」 来週は、大学入学共通テストの試行調査を踏まえ、今後の対策を考えます。基礎学力に加えて、共通テストで求められる読解力や情報を整理する能力をいかにして身に付けるか、学習法を探ります。

=2018/11/18付 西日本新聞朝刊(教育面)=