【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(6) ハズバンダリートレーニング(下) 改善策はみんなで議論

西日本新聞 筑後版

リラの尻尾からの採血方法を入園者に説明する飼育員の伴和幸さん 拡大

リラの尻尾からの採血方法を入園者に説明する飼育員の伴和幸さん

リンのエックス線撮影について話し合う飼育員や獣医師

 「レントゲン撮影時に頭が多少ブレてしまいました」。10月中旬、大牟田市動物園で入園者が帰った閉園後、事務所に飼育員約10人が集まってハズバンダリートレーニングに関するミーティングが開かれた。キリン班の河野成史さん(26)は、キリンのリン(雄、13歳)の訓練状況を、動画を見せながら説明した。

 リンはプリン(雌、4歳)の「結婚」相手で、大牟田に来園して12年になる。まだプリンにはできない体重測定や、病気やけがの要因にもなるひづめを整える「削蹄(さくてい)」も、訓練の成果でできるようになっている。

 河野さんが報告した頭部エックス線撮影は、健康維持に重要な歯の様子などを診るためで、木板の囲いの中に首を下げて頭部を入れてもらい、横からポータブル型の装置で撮影する。「木板の位置をずらせないか」「首をもう少し下げた方がいい」。リンが頭を揺らさないでいてくれる方法を全員で議論した。

 動物園では、3~4人の飼育員で複数種類の動物を受け持ち、キリン班、サル班、モルモット班、ライオン班の四つにグループ分けされている。月1回のミーティングでは班ごとに活動を報告し、全員で改善点の意見を出し合う。

 サル班はこの日、マンドリルのリル(雌、17歳)のトレーニングの際、一緒に暮らす娘のルル(雌、1歳)が餌を奪いに来るため、ルルにも笛を吹いて餌を与える初歩的な訓練を始めたことを報告。モルモット班はウサギ2匹の体重測定、ライオン班はキツネの採血トレーニングの進行状況など、それぞれの班が撮影した動画も交えて説明した。

 ハズバンダリートレーニングは健康管理だけでなく、動物園の目的の一つである種の保存に向けた研究にも役立てている。

 ライオンのリラ(雌、7歳)は、週2回の採血と2日に1回の膣(ちつ)細胞の採取ができるようになっている。その血液に含まれるホルモンと膣細胞の分析で、分からないことが多かった雌ライオンの発情周期が科学的に証明された。さらに、目視で比較的容易に確認できる膣から出る分泌物の量と、発情周期の相関関係も推測できるようになった。

 「各地の動物園で、繁殖を進めたり、避妊したりするのに資する研究成果になった」と、学会に発表した動物園の獣医師川瀬啓祐さん(29)。動物から採血した分析データの公表で園同士の連携も模索している。

   ◇     ◇

 大牟田市動物園(同市昭和町)が全国の注目を集めている。「動物福祉を伝える動物園」として高い評価を受け、入場者数増にもつなげている。飼育動物の「幸せ」のために、公設民営の小さな動物園が始めている取り組みを紹介する。

=2018/11/16付 西日本新聞朝刊=

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