【動物を幸せに~大牟田動物園の挑戦】(5) ハズバンダリートレーニング(中) 1日5分の訓練を重ね

西日本新聞 筑後版

プリンの訓練。ペレットを左手で与えながら首を触れさせてくれると、河野成史さんが笛を吹く 拡大

プリンの訓練。ペレットを左手で与えながら首を触れさせてくれると、河野成史さんが笛を吹く

プリンのトレーニング計画を確かめる河野さん

 大牟田市動物園では、全体のほぼ半数に当たる24種の飼育動物でハズバンダリートレーニングを試みている。どの動物も訓練開始前には、何を目標にするか、目的は何かといった計画が立てられる。

 キリンの飼育員河野成史さん(26)は、プリン(雌、4歳)が動物園に来て約半年後の2016年9月27日、計画書に訓練項目として「採血」「聴診」「検温」の順番で書き込んだ。採血に最初に取り組もうと決めたのは、妊娠が期待でき、覚えてもらう体勢も首を下げるだけで比較的容易だったからだ。

 採血では、河野さんが触ってもおとなしくしてもらうのが絶対条件。まず、先端にタオルを巻いた「ターゲット」と呼ばれる棒を持ち、物のにおいを確かめたがるキリンの習性で棒に近づいてきてもらった。手のひらにペレット(固形餌)を置き、食べさせる間に反対の手で触れる狙い。しかし、ペレットを食べるまで1カ月もかかった。

 キリンの主食は木の葉。野生ではほぼ1日中食べており、その量は1日60キロ。動物園で毎日準備するのは現実的ではない。そこで干し草や、栄養価の高いペレットを補助的に与える。プリンは最初、ペレットにあまり興味を示さなかった。ペレットはキリンが食べやすいように作ってあるが「キリンごとに好みはあり、ペレットよりおいしい葉があるし、食事に気が乗らない日もある」。キリンも人間も変わらない。

 ようやく手のひらから食べるようになっても、なかなか触らせてはくれなかった。少しでも触ると、下げた首を上げて離れてしまう。プリンに負担を掛けないために、訓練時間は1日5分程度が限界だ。

 制約の中、少し触れさせてくれたら笛を吹いて餌を食べさせ、それを何度も繰り返す。触られるのはプリンにとって「良いこと」と日々覚えさせていった。

 小さな目標を一つ達成すると次のステップへ。触る範囲を広げ、時間を長くする。さらに注射をする獣医師の存在や、注射前に首に塗る消毒用アルコールのにおいに慣れさせ、注射針の代わりに首に竹串を当て、少しずつ痛みを強く…。

 そういった訓練を一進一退しながら重ねていった。そして今年1月28日、ついに初めての採血に成功した。その時、プリンに驚かれないように平静を装った河野さんだが「心の中でガッツポーズしました」。

   ◇     ◇

 大牟田市動物園(同市昭和町)が全国の注目を集めている。「動物福祉を伝える動物園」として高い評価を受け、入場者数増にもつなげている。飼育動物の「幸せ」のために、公設民営の小さな動物園が始めている取り組みを紹介する。

=2018/11/15付 西日本新聞朝刊=

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ