慰安婦財団解散 合意の白紙化容認できぬ

西日本新聞

 韓国政府は、旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡る2015年の日韓合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」を解散する方針を発表した。

 日本政府は財団解散に同意していない。文在寅(ムンジェイン)政権による一方的な解散方針は、国家間の約束である日韓合意を韓国側の都合で白紙に戻す行為であり、全く容認できない。

 15年12月の日韓合意で、日本側は安倍晋三首相のおわびと反省の気持ちを示し「和解・癒やし財団」の原資となる10億円を拠出した。日韓両政府は慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。

 韓国側はこの拠出金で財団を設立、元慰安婦や遺族に支援金を渡すなどの事業を実施した。この事業により、合意時点で生存していた元慰安婦47人のうち34人に支援金を届けている。

 しかし、元慰安婦の一部や支援団体は合意に反発して受け取りを拒否した。文氏も世論に同調し「朴槿恵(パククネ)前政権が結んだ合意では、慰安婦問題を解決できない」と主張してきた。

 今回、文政権は公式に「合意は破棄せず、再交渉も求めない」としているが、合意の柱である財団の解散は事実上合意の否定だ。「最終的、不可逆的」とうたった合意が3年足らずでほごにされるようなら、今後の日韓交渉が成り立たない。その悪影響は限りなく大きい。

 日韓合意は、たとえ全ての関係者を満足させられないにしても、その時点の日韓両政府が、できるだけの譲歩をし合ってつくり上げた外交成果である。

 文政権が、合意形成のために双方の重ねた努力を軽視するのであれば、日韓の和解に向けて誠実に取り組んできた人々に徒労感を与えるだけだろう。

 韓国の世論に沿ったと言うが、合意を受けて元慰安婦の約7割が支援金を受け取った事実を、文政権はどれだけ国民に向けて説明したのか。発言力の大きい団体の意向を気にするのではなく、時には国民を説得してこそ責任ある政治家であろう。

 日韓両国の歴史問題を巡っては、元徴用工訴訟で韓国最高裁が日本企業に賠償を命じる判決を言い渡したばかりだ。

 日本側は一連の韓国側の動きに「約束破りだ」と強く反発しており、当面、日韓関係は厳しく冷え込むと予想される。

 ただ、日本側は感情的になるべきではない。北朝鮮情勢が急展開する中で、日韓両国ともに関係の決定的な悪化は避けたいとの共通認識がある。

 日本政府としては「国家間の合意の維持」という基本原則を前面に出しつつ、文政権が具体的な収拾策を提示するのを待つのが上策と言えよう。

=2018/11/23付 西日本新聞朝刊=

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