障害者活躍へ“地道な工夫” 法定雇用率達成の自治体では

西日本新聞

 中央省庁や地方自治体で障害者の雇用数水増しが明らかとなる中、九州で有数の職員数を誇る福岡県と福岡市は法的雇用率をクリアしている。その背景を探ると、10年以上前から続く、障害のある職員を交えた意見交換会や幅広い職場への配置といった「特別ではないが地道な工夫」で、役所全体の意識改革を目指す姿勢が見えてきた。

 ■労組と意見交換20年 福岡県

 パソコン画面をにらみ手際よく関係先へのメールを仕上げていく-。福岡県農林水産部で会計や予算の事務を担う職員、徳永ゆかりさん(44)は両耳に重度の難聴があるが他の職員とほぼ同じ業務を担っている。

 1999年入庁。唇の動きで言葉を読み取ることができ、対面での意思疎通に支障はないが、大勢での会話や電話対応は難しい。そのため周囲は対面での会話を心掛け、電話対応も同僚が代行。やりとりが多い係長のすぐ隣に席を配置している。電話対応のお返しは書類作りやメール作成でカバーするという徳永さん。上司は「仕事はてきぱきし正確」と頼りにする。

 福岡県知事部局は現在、身体、精神障害の正規職員が計183人勤務。本庁や出先事務所などで幅広い業務に当たる。今年6月時点の雇用率は3・45%と法定率を0・95ポイント上回った。

 県庁での環境づくりに貢献してきたのが障害のある職員でつくる「県職労障害労働者ネットワーク」。20年以上、人事課や庁舎の設備管理部署の関係者と意見交換会を続けてきた。

 手の不自由な人などのためにセンサー式の蛇口を設けるといった対策に結びついたほか、障害のある職員が出先事務所に出張する際、パソコンの業務端末でバリアフリー状況を確認できる仕組みを整えた。「雇用率を単に達成するという発想ではなく、障害に応じた配慮があれば能力を発揮できると考えてほしい」。水増しをしていた中央官庁や自治体に徳永さんは求める。

 ■嘱託員60カ所に配置 福岡市

 福岡市では、原則週30時間勤務する障害者を嘱託員として1年雇用(最大3年)する「チャレンジ雇用」を2005年から導入している。

 市道路下水道局で2年半、非常勤で郵便物の仕分け、発送を担当している精神障害の女性(40)もこの枠で入庁した。これまで福祉作業所での勤務経験しかなかったが「こんなに長く役所勤めができて、毎日充実している」と笑顔を見せる。

 チャレンジ雇用の採用者は現在76人おり、正規職員と合わせて雇用率は2・55%。うち72人は、正規には採用枠がない知的や精神障害者だ。他自治体でも類似の制度はあるが、その多くで1カ所に集められ業務に当たることが多いのに対し、福岡市では本庁舎や区役所、小学校など60カ所以上の部署に配置され、文書整理や調理補助に当たる。

 市人事課は「一緒に働くのが当たり前になれば、どんな仕事なら任せられるか自然に考えるようになるはず」と狙いを語る。

 精神障害者の家族などでつくる福岡県精神保健福祉会連合会の一木猛会長は「障害者の雇用を増やすために工夫している自治体は一定数あり、ありがたい」とした上で「正規雇用のほとんどはまだ身体障害に偏っている。精神、知的の障害を含めたバランスを改善し、自治体はより幅広い障害者の能力発揮の場づくりに努めてほしい」と求めた。

=2018/11/25付 西日本新聞朝刊=

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