「死んだら海に流して」増える墓じまい 撤去や散骨どうすれば

西日本新聞

みんなのモヤもや会議

 今月のテーマは「墓じまい、する? しない?」。核家族化や少子高齢化を背景に、墓を移したり、散骨したりする「墓じまい」が増えています。体験談のほか、墓参りの大切さ、墓にこだわらない弔いへの思いなど、さまざまな意見が寄せられました。

墓の撤去見届け、気持ち整理

▼非常勤講師男性(75)=福岡市博多区
 今春、母が眠る愛媛県内の墓を撤去した。私は2人兄弟で、関東に住む兄の意向で決めた。遺骨は粉砕して瀬戸内海に散骨した。一部は私の希望で小さな骨つぼに入れてもらい、手元に置いている。太平洋戦争で戦死した父の遺骨はなく、愛媛県内の国営の墓地に遺髪と爪が納められている。母の墓は撤去される過程を見届けたので、気持ちの整理がついた。

▼会社社長男性(73)=福岡県大野城市
 山口県にあった妻の実家の墓を3年前、自宅に近い福岡県太宰府市の霊園に移した。墓の近くには親族が誰もおらず、私と妻が法要や掃除に行くのも大変なので、近くにあった方がいいと考えた。改葬の手続きや遺骨を移す際の法要など大変だったが、管理しやすくなった。山口の墓のお寺からは「きちんと改葬してくれてありがたい」と言われた。最近は墓を継ぐ親族が近くにおらず、無縁墓になることが多いそうだ。

手を合わせる機会、大切

▼会社員女性(37)=福岡市城南区
 父方の墓が佐賀県にあり、父の命日やお盆など、年に数回墓参りに行く。幼い頃から墓参りは「家族での楽しいドライブ」だった。今も兄、弟とその家族で一緒に行く。いずれは長男である兄が墓を守るのだろうが、墓は今の場所にずっとあってほしい。ただ、墓が重荷になったり束縛されたりするようなことがあれば、それぞれに合った墓じまいの方法を探るのは良いと思う。

▼住職男性(74)=福岡市東区
 寺に隣接する墓地は、かつて500基の墓があったが、今は400基ほど。掃除や草取りが大変という理由で、遺骨を寺の納骨堂に移したという家が大半だ。命はご先祖さまとつながっている。暮らしの中で、ご先祖さまに感謝し、手を合わせる機会が少なくなっているのは寂しい。

人が来ずに荒れるよりは

▼住職男性(60)=福岡市中央区
 高齢のため、郊外への墓参りに車で行けなくなったという話をよく聞く。そのため、お参りのしやすい都市部の墓や納骨堂は、むしろ空くのを待っている人がいる状態だ。中には寺と100年以上付き合いのある家族もいて、小さかった子が大人になってお参りにきて「大きくなったね」と話すなど、寺としてはお骨と一緒に家族を見つめているようなところもある。ご縁がなくなるのは寂しいが、墓じまいそのものに良い悪いはないと思う。

▼会社役員男性(61)=奈良県在住
 年に3、4回、両親の墓参りをする。亡くなった人にとって墓はすみか。私にとっても、親との思い出と向き合える場所だ。私が若い頃、田舎では土葬が多かった。今は火葬が主流で、改葬すれば自分の近くに遺骨を移動できる。遠方で墓参りに行けず墓が荒れたり無縁墓になったりするよりも良いのではないか。

子どもたちには求めない

▼無職女性(67)=福岡市西区
 長男である父は転勤族だったので、叔父が家を継いだ。一人っ子の私は未婚で、跡継ぎもいない。92歳の母も私も、散骨で十分と考えている。人は亡くなれば空気みたいなもの。墓という形にはこだわらない。

▼主婦(71)=福岡市城南区
 離婚した母の遺言は「死んだら海に流して」「お墓も戒名も要らん」「回忌もせんでいい」だった。私の手を煩わせたくないという気遣いがあったのだろう。遺言通り7年前、玄界灘で散骨した。母のきょうだいからは「一族の墓に入れるべきだ」と反対され、私も初めは葛藤があった。でも実際に散骨し、私も夫も散骨派に変わった。母が自ら育てた花々と一緒に青い海に散っていったのがすてきだったし、墓がなくても身近に母を感じていられる。子どもたちにも、私たち夫婦は「お墓は要らない。散骨で」と伝えてある。

▼会社員男性(51)=福岡市早良区
 次男なので新たに墓を買った。叔母が独身で、どこの墓に入れるのだろうと心配していたので、「ここに入って」と安心させてあげたかった。私にとって家族そろっての墓参りは当たり前の光景だが、子どもたちには求めない。盆や正月に自分の魂が墓にあるとも思わないし。墓が負担になるなら、墓じまいしてもらって構わない。

   ◇   ◇

「先祖とのつながり感じる所」日本仏事ネット代表 寺田良平さん(46)

 全国の墓や霊園の情報を提供し、墓に関する相談に応じたり、葬儀や納骨についてのセミナーを開催したりしている。

 墓を、お参りしやすい自宅近くなどに移したいという相談は多い。少子化により、先祖代々の墓を守っていくのが難しくなっていると感じる。男のきょうだいがいないため、実家の墓をどうすればよいかという相談もある。

 死者に花を手向け、手を合わせるという行為は、世界共通のものだと思う。墓は宗派にかかわらず、亡くなった人に会いに行ける場所。昔は、どの家でも先祖の写真が飾られていた。先祖とのつながりを感じられる物や場所は、あった方がいいと考える。

 NHKが5年に1度実施している「日本人の意識調査」によると、「年に1、2回程度は墓参りをする」と答えた人の割合は、この20年で少しずつだが増え続けている。日本人がお参りを大切にする心は失われていないのではないか。(福岡市)

 

「自然と一体感ある散骨」NPO法人・葬送の自由をすすめる会九州支部長 友延明夫さん(74)

 少子化や核家族化で墓の管理や維持が難しくなっている中、海や山などで散骨する「自然葬」を提唱している。散骨について、法務省は「葬送を目的とし、節度を持って行う限り違法ではない」との見解を示している。当会では遺骨を2ミリ以下に粉砕する、周囲500メートルに人家がない場所で行うなど、幾つかのルールを定めている。

 これまでに十数人の散骨に立ち会った。多くの人は「これで良かった」と満足そうな表情を浮かべる。散骨を望む人に聞くと、夫の親族との関係に悩んだり、寺との付き合いが煩わしいと感じたりしているようだ。

 歴史的に見ると、墓は権威の象徴だった。家制度がなくなり、その後核家族化が進んだ結果、墓を守ることが難しくなっているのはやむを得ない。

 私は、死んだら散骨してほしいと妻に伝えている。古来日本人は自然との一体感を好んできた。その考えに自然葬は合っているのではないか。(福岡市)

【墓じまい】

 今ある墓を撤去すること。撤去した後の遺骨は、別の墓や納骨堂に移す(改葬)▽粉砕して散骨▽自宅保管-などの方法がある。改葬の場合、現在の墓がある自治体に「改葬許可証」を申請し、それを移転先の墓の管理者に提出しなければならない。厚生労働省によると、改葬は2017年度、全国で約10万4000件に上る。墓じまいを巡ってはトラブルもあり、7月には愛知県の女性が墓を無断で撤去した親族に損害賠償を求めて提訴した。

 

=2018/11/23付 西日本新聞朝刊=

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