僕は目で音を聴く(29) 文章が苦手な理由を知って

 全員ではないのですが、私の周りの聴覚障害者は比較的、文章が苦手な人が多いです。私ももともとはそうでした。特に助詞と接続詞の使い方がよく分かっていませんでした。意思疎通の主な手段として、言葉や文章のように文字や単語を一言一句表現するわけではない手話を使うことが多いからでしょうか。

 私は「文章が苦手なことは当たり前」と開き直り、積極的にコミュニケーションを取る方でしたが、前に勤めていた会社の上司が日本語にものすごく厳しい人で、叱られてばかりでした。今ならパワハラと受け取られかねない強い言い方だったと記憶しています。すごく悔しくて、本を読み始めました。

 それまでは読書が嫌いで、もっぱら漫画ばかり。本もいろいろなジャンルがありますが、私は海外旅行が好きなので、そうした関連本をよく読みました。そのおかげか、文章力が少しずつ伸びてきたと思います。完璧ではありませんが、前に比べて周りから指摘を受けることも少なくなってきたので、自信もついてきました。文章を書く機会も増え、今では教える側になることも。かつて怒った上司に、結果的には感謝したい部分もあります。

 今の若い聴覚障害者は、自分たちの世代より文章が書ける人が多いです。おそらくスマートフォンが普及してテレビも字幕付きが増え、身近な文字情報に触れる機会が広がっているからではないでしょうか。昔は聞こえる聴者からみて、聴覚障害があること自体を「かわいそう」ととらえる向きが多く、結果的に「聴覚障害者の文章力を鍛える」という積極的な取り組みにつながっていなかったことも原因だと思います。言語力を向上させることを諦めている聴覚障害者もいます。

 手話というものが、文章をそのまま言葉に変換しているわけではないために文章が苦手な人がいることを、聴者がもっと意識してくれれば。そして強制することなく少しずつ、聴覚障害者の意欲を引き出していってほしいです。
 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/11/22付 西日本新聞朝刊=

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