売買サイト、象牙違法取引の温床に 未登録品の摘発相次ぐ

西日本新聞

象牙を取り扱う古美術商に立ち入り調査を行う福岡県警の警察官ら=10月、福岡市博多区 拡大

象牙を取り扱う古美術商に立ち入り調査を行う福岡県警の警察官ら=10月、福岡市博多区

売買サイトに違法に出品された象牙(LIA提供)

 福岡県警が、インターネットの売買サイトで象牙を売ろうとした出品者を相次いで摘発している。象牙の国内流通を禁じる動きが世界的に進む一方、日本は国内取引を認めている。工芸品の材料や古美術品として人気が高い象牙は、取引の際、象牙そのものを環境省へ登録しなければならないが、未登録のまま、軽い気持ちでオークションやフリーマーケットのサイトに出品する例が増えている。6月には罰則を強めた改正法が施行され、規制強化を進めているが、識者は売買サイトが「違法取引の温床になっている」と指摘する。

 「本象牙、龍の彫刻ありで7万5千円」。捜査員は昨年5月、売買サイトで象牙の出品を見つけた。環境省へ未登録の象牙だった。今年11月、種の保存法違反容疑で、出品した福岡市の女性(51)を「厳重処分」の意見書を付けて書類送検した。親族から象牙を譲り受けた女性は「違法と知らなかった」と話したという。

 県警は他にも売買サイトに未登録の象牙を出品したり、偽物を本物の象牙と説明し出品したりしたとして、男性2人を3月と11月にそれぞれ書類送検した。

 警察庁によると2013~17年、象牙の違法取引の摘発は計18件で九州ではゼロだったが、県警は今年だけで3件を書類送検した。

 象牙は日本で印鑑や古美術品などに使われ、1キロ当たり2万円前後で取引される高級品だ。ワシントン条約で国際取引が禁止されているが、今も絶滅危惧種のアフリカゾウが年間約2万頭も密猟されているという。日本は輸入禁止前に持ち込まれた約2千トンの取引を認めているが、登録済みは321トン(16年現在)にとどまる。冒頭のケースのように未登録品が相当量出回っているとみられるが、把握は追いついていない。

 違法取引調査を行う動物愛護団体「LIA」(長野県)は、ここ8年間で売買サイトへの違法出品を約80件確認。運営者が規制を行っていないサイトもあるといい、矢吹蓮代表は「事実上の無法地帯になっている」と指摘する。

 県警も「誰でも気軽に出品できる売買サイトの浸透で、近年は未登録品の取引が増えた」(幹部)とみて、サイトの監視や啓発活動を強化。生活経済課の高以来憲一次席は「軽い気持ちで出品する人が少なくないが、違法行為と知ってほしい」と強調する。

 象牙の違法取引に詳しい金子与止男・元岩手県立大教授は「違法取引を防ぐには、サイト運営者による規制が不可欠。規制ができないというのであれば、象牙は一切出品させないなど徹底した対策が求められる」と話している。

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【ワードBOX】象牙の取引規制

 ワシントン条約は1989年、象牙の国際取引を禁止した。2016年には条約締結国会議で、国内の市場閉鎖を求める勧告が決議された。世界最大の市場だった中国や米国は既に市場閉鎖を進めている。国内取引を認めている日本は、今年6月に改正種の保存法を施行。象牙そのものの登録に加え、届け出制だった取引業者を審査が必要な登録制に変えて罰則も重くした。環境省は、九州を含む全国4カ所の地方環境事務所に「象牙Gメン」を配置、福岡県警も古美術商の立ち入り調査を行うなど違法取引の監視を強化している。

=2018/12/02付 西日本新聞朝刊=