官民ファンド 意義再考し国民に説明を

西日本新聞

 国内最大の官民ファンドが、発足後わずか2カ月半で、暗礁に乗り上げてしまった。

 産業競争力強化を目的に設立された資金規模2兆円の官民ファンド産業革新投資機構(JIC)で、取締役11人のうち、田中正明社長ら民間出身の9人全員が辞任を表明した。役員報酬や投資手法を巡り、所管の経済産業省との信頼関係が崩壊し、修復不能と判断したようだ。

 ベンチャー企業の育成など日本の産業構造転換の推進役と期待された組織の活動休止だ。その主因は、国民の税金を主な原資とする官民ファンドの意義や役割、報酬に対する、国とJICの思惑がずれたまま船出し、その後のかじ取りもぶれたことではなかったか。

 JICは、政府による企業救済色が強かった前身の産業革新機構を見直し、成長性のある技術や企業に資金供給する新たな組織として、今年9月に発足した。経産省は機構のトップに海外経験豊富な元銀行マンの田中氏を起用し、JICは、まずは米国の有望な創薬企業への投資を本格化させ、国内企業との橋渡しも担うはずだった。

 旧機構時代の投資案件ごとに経産相の意見を仰ぐ前例を改め、経産相が認可するファンドにJICが出資、そのファンドが個別企業に投資できるなど迅速な投資判断も目指していた。

 混乱の発端は、JICの報酬制度を巡る経産省の失態だ。当初、経産省は経営陣に対し、最大で1億円を超える報酬を提示していたのに、高額との批判が出ると一転して撤回した。さらに経営に政府の関与を強める姿勢を示し、予算減額案も打ち出した。何らかの力が働いたのだろうか。官庁として一貫性を欠くと言わざるを得ない。経緯の説明を求めたい。

 対立の根元には、世界水準の投資のプロを集め、最先端の研究やベンチャー企業などに機動的に投資資金を供給して新産業育成を目指すJICと、その理念は理解しつつも、多額の国費を使う以上、経営の根幹に、より深く関与する必要性を感じた国側とのギャップがある。

 概して、官民ファンドの立ち位置は難しい。成長産業への投資にはリスクを伴い、損失を出せば世論の批判を浴びる。逆にもうけ過ぎても民業圧迫と批判される。官民ファンドの中には損失を抱えるケースも多く、問題も指摘されている。

 今回、JICは目標や必要性、報酬などについて情報をオープンにし、納税者である国民の理解を得つつ事業を進める必要があった。「解体的出直し」を目指すなら、その存在意義は何か、原点に返って再考し、国民への説明から始めるべきだ。

=2018/12/12付 西日本新聞朝刊=

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