水道「民営化」 安易な導入で禍根残すな

西日本新聞

 改正水道法が先の臨時国会で成立した。日本の水道事業は普及率の高さ、水質の良さ、漏水率の低さなど世界有数の完成度と評されてきた。その歴史的転換につながる可能性がある。

 改正法は、水道事業の経営基盤の強化が目的という。主に市町村単位で経営されている事業の広域連携や、施設の所有権を自治体が保持したまま運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入が柱である。

 水道は命にかかわる大切なインフラだ。健全に維持されなければ暮らしは成り立たない。「民営化」でサービスが低下したり、安定供給に支障が生じたりしないか。残念ながら、懸念について国会審議が尽くされたとは言えない。民間売却の是非は自治体が判断する。安易な民営化は将来に禍根を残しかねない。慎重な検討を求めたい。

 水道事業は確かに厳しい状況に直面している。人口減少で、十分な料金収入を得られない地域が多い。家庭や事業所などの1日当たりの使用量は、2000年の約4千万キロリットルをピークに減少に転じ、65年にはその6割程度まで減るともいう。

 耐用年数の40年を超えた全国の水道管の割合は、16年度時点で約15%に達し、漏水など事故が多発している。老朽管の更新や浄水施設などの耐震化は多大なコストを要する。事業の抜本的見直しは喫緊の課題だ。

 厚生労働省によると、上水道でコンセッション方式の導入例はないが、浜松市や大阪市などが検討に乗り出すという。

 運営を担う企業は当然、営利が目的だ。買収後その地域の給水施設を独占するため、料金の上昇につながりやすいという。海外では、民営化で料金高騰や水質悪化などを招き、公営に戻した事案が続出している。

 災害時の復旧対応で最終的な責任を負うのは自治体だ。民間運営が長期にわたり、その間に自治体から運営ノウハウが失われていけば、十分な対処ができなくなる恐れもある。

 民営化する場合、売却先の運営実態を定期的にチェックする仕組みや制度が必要となろう。

 そもそも、利益が出ていない自治体の水道事業に、企業が参入するとは考えにくい。参入対象は数十万人程度の人口規模が条件ともいわれる。民営化は、どんな自治体にも有効な経営改善策というわけではないのだ。

 過疎地が多い九州の自治体からは、民営化に慎重な声が聞こえてくる。まずは、事業の広域化を検討し、水源や施設の効率的活用や管理の一元化などでコスト減を図るべきだろう。

 各地自治体は情報を住民と共有し、持続可能な事業に向けて議論を深めることも肝要だ。

=2018/12/14付 西日本新聞朝刊=

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