あおり運転判決 「路上の激怒」根絶したい

西日本新聞

 「路上の激怒」-。車の運転中、怒りを突然あらわにし、攻撃的な行動に出ることを交通心理学で、そう呼ぶ。いわゆる「あおり運転」につながる危険な感情の発露だ。

 東名高速道路であおり運転を受けて停車させられた夫婦が、トラックに追突されて死亡した事故の裁判員裁判で、被告の男(26)=福岡県中間市=に懲役18年の判決が言い渡された。

 被告は、パーキングエリアで駐車方法を注意されたことに腹を立て、夫婦の車を追い掛けたという。典型的な「路上の激怒」である。欧米では「ロードレイジ」と呼ばれ、以前から問題視されてきた。日本では昨年6月に起きたこの事故をきっかけに、一気に社会問題化した。

 裁判は、停車後の事故にも危険運転致死傷罪が適用されるかが最大の争点だった。判決は、被告の4度にわたる妨害運転が、停車後に起きた後続トラックによる死亡事故を現実化させたと断じた。弁護側は事故に至るまでの事実関係を認めた上で、危険運転の罪は適用できないと反論していた。

 高速道は車がとどまらないことを前提とした道路だ。被告が無理やり停車させたこと自体が、著しく常軌を逸している。判決は、社会通念や国民感情に照らし妥当な内容である。

 警察庁は今年1月、悪質で危険な運転に対し、法令を駆使して徹底捜査するよう全国の警察に指示した。福岡県警などはヘリコプターを投入し、上空からの取り締まりも実施した。

 高速道で、前方の車との車間距離を詰め過ぎたなどとして、全国の警察が1~6月に道交法違反(車間距離不保持)容疑で摘発した事案は6千件余に上った。取り締まりの強化で昨年同期から倍増した。他に、割り込みや急ブレーキといった行為に刑法の暴行容疑などを適用したケースもあった。

 悪質なあおり運転に遭っても慌てずパーキングエリアに入り、ドアを開けずに110番したい。今後はドライブレコーダーを車の標準装備とすることも社会の課題となろう。

 摘発だけでなく、教育も大事だ。飲酒運転の弊害などとともに日頃から子どもたちにその危険性を教えたい。免許更新時などの講習の場も活用できる。
 怒りを抑える心理学的なアプローチも必要となろう。ただ突然の怒りは、特定の人だけに芽生えるわけではない。ウインカーを出さないままの車線変更など、相手の無意識の運転が誘発することもある。まずは交通ルールの徹底が基本だ。

 判決を機に、あらゆる機会を捉えて、あおり運転の根絶を図っていきたい。

=2018/12/15付 西日本新聞朝刊=

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