辺野古埋め立て 民意聞かない政治の劣化

西日本新聞

 政府は14日から、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先としている名護市辺野古沿岸部で、埋め立て予定海域への土砂投入を始めた。

 事前に発表されていた作業とはいえ、実際にダンプカーから投入された土砂が青い海を埋めていく光景は衝撃的である。

 埋め立てが進めば、現場の原状回復は困難になる。普天間移設問題は新たな局面に入った。

 安倍晋三政権が土砂投入に踏み切った意図は明白である。辺野古での建設工事を後戻りが難しい段階に進めることで、移設反対を訴えてきた沖縄県と沖縄県民に「もう反対しても無駄だ」と諦めさせることだ。

 普天間飛行場の移設を巡っては、日米両政府が辺野古に代替施設を建設することで合意したのに対し、沖縄県は「県内移設では沖縄の基地負担の軽減にならない」と反対してきた。

 今年9月に実施された知事選で、辺野古移設反対派の玉城(たまき)デニー氏が過去最多得票で当選するなど、沖縄県における「辺野古ノー」の民意は明確だ。

 一方、安倍政権は「辺野古が唯一の解決策」の立場を崩さず、沖縄県の反対に耳を貸さずに移設への作業を進めている。

 政府は玉城知事就任後に沖縄県との集中協議を実施したが、1カ月足らずで打ち切った。安倍首相の「沖縄に寄り添う」の言葉は空疎と言うほかない。

 沖縄県は来年2月に、辺野古移設の是非を問う県民投票を実施する予定だ。安倍政権がこの時期に土砂投入を強行した背景には、埋め立てを既成事実化することで、県民投票の民意を無力化する狙いがある。

 さらに、できるだけ早く埋め立てを開始し、来年の参院選までに「強行」イメージを薄めようとの意図も透けて見える。

 埋め立て予定地については専門家から地盤の軟弱さを指摘する声が上がっている。地盤や工事の現況を踏まえた沖縄県の試算では、事業費が国の計画の約10倍になる可能性もあるという。政府はこうした疑問に対し納得のいく説明をしていない。

 玉城知事は土砂投入を受けて「工事を強行すればするほど、県民の怒りは燃え上がる」と語った。政府は直ちに土砂投入を中止し、沖縄県との対話を再開する必要がある。さらに土木の専門家も交えて工事の全体像について協議するとともに、県民投票で示される民意を尊重すると県側に約束すべきである。

 政治の本旨とは、謙虚な姿勢で民意に耳を傾け、実現に力を尽くすことだ。それどころか、ブルドーザーさながらに民意を押しつぶし、立ち止まって話し合う度量もない。心が寒くなるような政治の劣化ではないか。

=2018/12/16付 西日本新聞朝刊=

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