海外客対応から国内普及へ 林秀毅氏

西日本新聞

国際大学特別招聘教授林秀毅氏 拡大

国際大学特別招聘教授林秀毅氏

 ◆キャッシュレス決済

 九州経済の今後を考えるにあたり、重要なことは何だろうか。ここでは「アジア」と「IT化」という二つのキーワードを取り上げたい。

 九州にとってアジアが地理的に近く、以前から経済的にも緊密な関係にあることはいうまでもない。一方、IT化は人工知能(AI)の活用など多様な側面を持つが、ここでは消費者が商品やサービスを購入する場合の「キャッシュレス決済」に注目したい。

 現在、この二つのキーワードが強く結びついていることが、重要なポイントとなる。ここ数年、中国のIT企業が急成長し、中国国内にとどまらず東南アジアの地元企業等と協力するネットワークが形成されている。

 今年7月、JR九州が中国のIT企業アリババグループとの戦略的提携を発表した。アリババグループは世界最大級のオンライン・モバイル取引企業であり、この提携により、中国から九州を訪れるインバウンド客のリピーター化などが期待されている。

 強調したいのは、海外からのインバウンド客向けの取り組みが、今後、国内キャッシュレス決済の普及にもつながる点だ。

 日本国内で、アリババのキャッシュレス決済「アリぺイ」のサービスを利用できるのは中国人インバウンド客だけ。しかし今秋、アリババグループが東京で開催した大規模なセミナーでは、インバウンド客と日本人客双方のモバイル決済に対応できる機器の体験コーナーが設けられていた。同時に、LINEやソフトバンクグループが、国内向けモバイル決済サービスを強化する方針を明らかにした。

 九州でも戦略的提携を起点に、モバイル決済のより広い普及を目指す協議会が発足した。モバイル決済の普及は、高齢化と人手不足に悩む商店や中小企業の生産性向上につながる。観光地でも、海外客へのキャッシュレスの対応が必要な場合にも有効だろう。

 政府は、国内のキャッシュレス化を推進している。日本ではクレジットカードの比率が高いため、小売店が手数料の支払いや事務の手間を好まず、キャッシュレス化を妨げる一因になっていた。

 インバウンド対応をきっかけに、九州が地域全体のキャッシュレス化を進める全国に先駆けたモデルケースとなることを期待したい。

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  林 秀毅(はやし・ひでき)国際大学特別招聘教授 1981年、東京大法学部卒。同年日本興業銀行入行、福岡支店で勤務。調査部、みずほ証券、一橋大などを経て現職。日本経済研究センター特任研究員を兼務。

=2018/12/16付 西日本新聞朝刊=

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