税制改正大綱 規律を欠いた増税対策だ

西日本新聞

 これでは税制改正大綱ではなく「消費増税対策大綱」だ。

 与党が2019年度の税制改正大綱をまとめた。その中身は、来年10月の消費税増税に過敏になった過剰な対応が目立つ。参院選挙をにらんで財政再建より景気対策を優先したようだ。税制改正大綱には、税体系全体を見渡し、将来を見据える大局観が必要だ。そして消費税の増税は社会保障のコストを賄うためのものだ。その原点を忘れてもらっては困る。

 税制改正は、中長期的な税制の在り方を踏まえた上で、足元の政策課題に対応することが肝要だ。ただ来年度大綱は、格差是正や所得再配分機能の強化など抜本課題は素通りし、目先の増税対策に終始した感が強い。

 消費税対策では、10%への増税後の需要喚起策として、自動車と住宅が焦点となった。

 自動車は、車の保有者が毎年支払う自動車税について、19年10月以降に購入した新車から最大年4500円引き下げる恒久減税を行う。さらに購入時の税負担も1年限定で軽減する。

 また、住宅も増税時から20年末までの間に入居する購入者に限り、住宅ローン減税の適用期間を現行の10年間から13年間に延長する。

 問題なのは増税対策として、食品などの税率を8%に据え置く軽減税率の導入のほか、来年度予算にもキャッシュレス決済時のポイント還元やプレミアム商品券など数々の対策が盛り込まれようとしている点だ。付けを顧みない大盤振る舞いである。前回の消費税増税時に景気の下振れを招いたからと言って、これでは「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」だ。税財政運営の規律や計画性は、どこへ行ったのか。

 もちろん大綱に将来を見据えた改正が無いわけではない。

 電気自動車やカーシェアリングの普及などで車を取り巻く環境が激変する中、20年度以降、走行距離に基づく課税など「保有」から「利用」に軸足を置く制度を検討する。車が頼りの地方への配慮など課題はあるが、時代の動きに対応している。

 個人事業主が事業用の建物や車などを後継者に相続、贈与する際の税の全額猶予も決めた。税負担を理由にした廃業を防ぎ世代交代を促す税制だ。透明性ある運用を求めたい。

 わが国の税制は、負担が勤労世代に偏っていること、所得再配分機能が弱く格差が拡大していることが大きな課題だ。

 株式売却益や配当などは税率が一律20%で富裕層優遇の批判も強い。こうした金融所得に対する課税強化は積極的に議論する必要があったのではないか。

 大綱が消費税対策の減税ばかりでは国の将来も心もとない。

=2018/12/17付 西日本新聞朝刊=

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