「西郷どん」上野の像、なぜ軽装? 背景に政府の思惑

 NHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」が終わった。維新の立役者の生涯を描いた物語が面白くないはずはない。舞台は九州、せりふは鹿児島弁とあって、例年になく日曜の夜が楽しみだった

▼ドラマの完結に合わせたように、東京・上野公園にある西郷隆盛像がきのう、除幕から120年を迎えた。恰幅(かっぷく)の良い着流し姿で愛犬を連れた像は、私たちが抱く西郷のイメージそのものだ

▼実は西郷の写真は一枚も残っていなかったという。作者の高村光雲は弟の西郷従道やいとこの大山巌をモデルにした西郷の肖像画を参考に像を制作した

▼完成した像を見た西郷の妻は「主人はこんな人じゃなかった」と落胆したとか。風貌が似てないというより、浴衣のような軽装で人前に出る無礼な人ではなかった、と言いたかったそうだ。鹿児島市・城山にも西郷像が立っている。こちらは直立不動で立派な軍服姿だ

▼故人を顕彰する像は正装が常識。上野の像が軽装になったのには理由がある。西南戦争で反乱士族の首領に担がれた西郷は、政府に弓引く「逆徒」とされた。大日本帝国憲法発布に伴う大赦で名誉回復すると、人気の高い西郷の像を造る計画が持ち上がった

▼だが、政府内には西郷への反発もまだ強く、威厳のある姿の像は許されなかったのだ。姑息(こそく)な思惑は裏目に出たか。「上野の西郷さん」は飾り気のない親しみやすさで、ますます庶民に愛されることになった。

=2018/12/19付 西日本新聞朝刊=

関連記事

PR

開催中

久木朋子 木版画展

  • 2021年10月13日(水) 〜 2021年10月18日(月)
  • 福岡三越9階岩田屋三越美術画廊

PR