防衛大綱 能力も費用も歯止め無く

西日本新聞

 政府が、新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」と、今後5年間の装備品(兵器)の取得方針を定めた中期防衛力整備計画(中期防)を閣議決定した。日本の安全保障の方向性を示す重要な指針と計画である。

 一読して二つの大きな疑問を抱く。一つ目は「いったいどこまで軍事的能力を拡大するのか」。もう一つは「いったいどこまで費用をかけるのか」。能力も費用も歯止め無く伸ばしている印象を受けるからだ。

 防衛大綱は中国の軍事力を「強い懸念」とし、北朝鮮についても「核・ミサイル能力に変化はない」と警戒を維持する。

 こうした情勢を受け、優先事項として、既存の「いずも」型護衛艦に戦闘機を搭載できるよう改修する「空母化」や、宇宙、サイバー、電磁波など新領域での能力強化を挙げている。

 ここで懸念されるのは、戦後日本の安全保障政策の大原則である「専守防衛」との整合性だ。これまで政府は「攻撃型空母」について「専守防衛に反し、憲法上保有できない」との見解を示してきたからだ。

 宇宙、サイバー、電磁波領域の防衛力は、日本が立ち遅れている分野だとされる。必要な能力の獲得が急務なのは理解できるが、特にサイバーは「防衛」と「攻撃」の切り分けについて法的整理が進んでいない。

 いずれも、憲法9条の本旨である「専守防衛」をなし崩しに逸脱し、際限のない軍事的能力の拡大につながりかねない。

 一方、中期防(2019~23年度)は、5年間の防衛力整備に関わる総額を約27兆4700億円とした。現在の中期防を2兆8千億円上回り過去最高となる。目を引くのが、米国の高額な装備品を大量に購入する計画だ。政府は今回の新大綱策定に合わせ、米国の最新鋭ステルス戦闘機F35を105機新たに取得する方針を決めた。1機約100億円なので合計で1兆円超に上る見通しだ。

 米国製兵器を売りたいトランプ米大統領の要請に応じて導入する構図が見え隠れする。

 高額兵器の購入は確実に財政を圧迫する。運用や訓練にかかる費用も膨張する。今後力を入れていく宇宙や電磁波領域も、どれほど費用がかかるのか未知数だ。国家財政が苦しいにもかかわらず、防衛費の聖域化が進んでいるのではないか。

 日本が米国と中国の覇権争いに巻き込まれて軍備拡大を続けていけば、専守防衛の枠を超え、平和主義の道を踏み外す恐れが高まる。いずれは財政上の負担も国力を超える。早く軍縮の流れをつくらなければ「防衛力を強化して国が衰える」などということになりかねない。

=2018/12/19付 西日本新聞朝刊=

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