不適切医大入試 医学界全体で差別なくせ

西日本新聞

 医学部医学科を置く大学の9校に1校が、特定の受験生を優遇するなど不適切な措置を実施していた。不当な入試の横行に憤りを禁じ得ない。

 文部科学省が全国81校に実施した緊急調査の結果を発表した。不適切とされたのは、最初に問題が発覚した東京医科大のほか、順天堂大(東京)、福岡大など9校に上る。聖マリアンナ医科大(神奈川)も不適切な可能性が高いと指摘された。

 9校のうち東京医科大など3校で、男性に一律に加点するような「女性差別」が確認された。浪人生を不利に扱う措置は福岡大など6校が行っていた。

 各校は早急に、不当に不合格とされた受験生の救済や補償に誠実に取り組んでほしい。

 他にも国公立を含め10校以上で、面接評価に「保護者が同窓生」のコメントがあるなど、疑惑を招きかねない事案が見られたという。今回の発表で、医学部入試の不透明さが一掃されたとは言えまい。指摘を否定した聖マリ医大を含め全大学で改めて過去の入試を検証すべきだ。

 全国医学部長病院長会議は11月、性別や浪人回数で差を設ける入試を不適切とする一方、一定の条件で同窓生の子弟枠を容認する規範を示した。

 子弟枠が寄付金目当てに使われる懸念はないのか。医師の養成には公費が投じられる。特定の受験生を有利にする措置に国民の理解が得られるのか。さらに議論を深める必要があろう。

 不適切入試の背景には医療現場のさまざまなひずみがある。

 女性医師は結婚や出産に伴い離職しがちで、それが現場の医師不足を招く一因との指摘がある。仮に事実としても女性差別で解消を図るのは言語道断だ。

 厚生労働省の2014年のまとめでは、日本の女性医師の比率は、経済協力開発機構(OECD)の加盟国で最低である。現状を直視し、医療現場のワークライフバランスの是正など、女性医師が無理なく定着できる環境整備を急ぐべきだ。

 神戸大は地域特別枠で過疎地域の出身者に、金沢医科大は北陸3県の高校出身者らに加点していた。九州も医療過疎地を抱えており、地域医療体制を守りたいという意図は理解できるが、募集要項にない基準に基づく得点操作は明らかに不当だ。

 どんな人材を入学させるのか。大学には自治に基づく裁量がある。ただ、「公正かつ妥当な方法」で行われるべき入試が、医療現場の都合で内密に操作されていいはずがない。医学界全体で問題を重く受け止め、医療を志す受験生、現場の医師、信頼できる医療を望む国民の誰もが納得できる、適正な入試実現の努力を求めたい。

=2018/12/20付 西日本新聞朝刊=

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