「隔離政策」家族に苦しみ ハンセン病家族訴訟が結審 熊本地裁、来年5月判決へ

西日本新聞

熊本地裁前で集会に臨むハンセン病家族訴訟の原告や支援者たち=21日午後1時すぎ、熊本市 拡大

熊本地裁前で集会に臨むハンセン病家族訴訟の原告や支援者たち=21日午後1時すぎ、熊本市

 国のハンセン病隔離政策によって、患者本人だけでなく家族も偏見や差別を受けたとして、元患者の家族561人が国に謝罪と1人当たり550万円の損害賠償を求めた訴訟が21日、熊本地裁(遠藤浩太郎裁判長)で結審した。判決は来年5月31日。

 2001年のハンセン病国家賠償訴訟の違憲判決後も救済から取り残された家族の被害を巡る初めての集団訴訟。20~90代の原告は患者の子や、発症時に同居していた親やきょうだいで、らい予防法廃止から20年となり、民法の規定で国の加害責任を問えなくなるのを前に16年に提訴した。

 原告側は、らい予防法に基づく強制収容や無らい県運動によって、ハンセン病への誤った認識が広まり、患者家族は地域社会から排除されるなどの被害を受けたと主張。弁護団は「隔離政策によって家族にも偏見差別が及び、家族間の断絶が生じた」と意見陳述した。

 国は「らい予防法の隔離規定は患者を対象としていて家族ではない」と法的責任を否認。時効を理由に損害賠償請求権の消滅も主張している。

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■「共通損害」の認定が焦点

 発症が分かると患者を国立療養所に収容する。家中が真っ白になるほど消毒薬をまく。患者の子を「未感染児童」と呼び、療養所内の保育所に入所させる-。

 原告側は、国の隔離政策が「ハンセン病は感染力が強く恐ろしい伝染病」との誤った認識を社会に植え付けたことで、家族も差別や偏見を受けたと訴える。国は「隔離規定の対象は家族ではない」と責任を否認。最大の争点である隔離政策と家族被害の因果関係を巡る双方の言い分は大きく乖離(かいり)している。

 元患者家族による集団提訴は2016年。ハンセン病国家賠償訴訟の01年熊本地裁判決を受け元患者と国が和解した基本合意から15年がたっていた。背中を押したのは、隔離政策が家族に及ぼした被害と国の責任を明確に認めた鳥取地裁判決(15年9月)だった。

 判決は「遅くとも1960年には、ハンセン病患者の子に対する社会内の偏見差別を除去するための相当な措置を取るべきだった」と国を指弾。原告の訴えは時効などを理由に退けたが、国賠法上の違法性と過失を初めて認定した。ただ、今年7月の広島高裁判決は国の責任を否定して大きく後退。最高裁で係争中だ。

 「共通損害」の認定も集団訴訟の鍵を握る。561人個別の被害を立証するには膨大な時間を要するため、原告側は、01年判決が認定した元患者の「隔離政策により社会内で平穏に生活することを妨げられた」という共通の損害を家族にも適用するよう求める。

 損害の柱として、原告側は「偏見差別を受ける地位に置かれた」「家族関係を築くことを阻害された」の2点を強く訴え、国は「全員に共通する損害はない」と反論する。共通損害が適用されなければ幅広い救済にはつながらないことが予想され、裁判所の判断が注目される。

=2018/12/22付 西日本新聞朝刊=

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