来年度予算案 新時代への展望が見えぬ

西日本新聞

 「平成」最後に編成した新時代の幕開けを飾る予算だが、それにふさわしい内容とは言い難い。

 政府が2019年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は101兆4564億円で、当初予算として初めて100兆円の大台を突破した。

 歳出では来秋の消費税増税を名目に臨時で特別な経済対策を膨らませ、医療や介護など社会保障費や防衛費も過去最大に増額した。

 歳入では消費税増税を見込んで税収を62兆4950億円とし、預金保険機構の剰余金繰り入れなど異例な税外収入も加え、新規国債の発行は32兆6598億円と9年連続で減額した。

 歳出は増やすが新たな借金は減らす-。一見、積極財政と財政健全化を両立させたような形だが、歳入の3分の1を借金で賄う危うい構造は変わらない。景気安定が最優先とはいえ、消費税増税分を超える増税対策は無節操だ。国民の負担を伴う歳出改革も選挙を控え先送りされた。増税対策特化予算とでも言うべき野放図さに、新時代への展望はうかがえない。

 ●無節操な増税対策特化

 予算肥大化の最大要因は消費税率を10%に上げるのに伴い、過剰なまでの対策を行ったことだ。

 最も首をかしげるのがポイント還元である。「税率引き上げ前後の消費の変動をならす」ため、中小店舗でクレジットカードなど現金以外で買い物をした客に対し、ポイントを還元する措置に2798億円を予算化した。

 増税後の消費の落ち込みにどれだけ有効なのか疑問だ。そもそも現金しか使わない人には恩恵がない。複数の還元率が混在するので消費者も業者も戸惑いや不満が強い。導入するのなら、誰もが使いやすい制度でなくては困る。

 増税対策としてこれに加え、プレミアム商品券の発行のほか、防災・減災などインフラ整備にも1兆3475億円が計上された。税制面でも、食品などの税率を8%に据え置く軽減税率導入のほか、住宅や車の減税も実施予定だ。

 年度途中の秋に消費税率が上がるので、来年度に限れば国民の負担増は6千億円程度との見方もある一方、経済対策は2兆3千億円に上るようだ。これでは増税の副作用におびえた過剰反応予算措置ではないか。

 もう一つの焦点だった社会保障費は、過去最高の34兆587億円となった。概算要求時に6千億円と想定されていた高齢化に伴う自然増分を4768億円に圧縮した。ただ、幼児教育・保育の無償化や年金生活者への支援給付金など消費税増収分を使った施策が上乗せされ、総額は大幅増となった。

 防衛費も新たな「中期防衛力整備計画」に沿い、過去最大の5兆2574億円を計上した。米国製の高額装備品購入など対米配慮が目立つ。言いなりではいけない。

 気になるのは増税対策予算ばかりが目立ち、経済の成長や活性化に向けた予算の影が薄いことだ。未来を見据えた事業や政策にもっと光を当てるべきだ。

 予算計上された「空飛ぶクルマ」実現に向けた調査や諸研究、ロボットや人工知能を活用した農業の実証実験など未来につながる政策は、着実に実施してほしい。将来の学術研究を担う若手研究者への科学研究費助成事業も充実させたい。外国人材を受け入れ共生していく事業では、働く人の視点に立った環境整備こそ大切だ。

 ●補正一体で歳出改革を

 政府は、総額約2兆7097億円の本年度第2次補正予算案も決定した。安倍晋三政権では、補正予算編成が常態化している。第2次政権の発足以来、補正予算は計10回組まれ、歳出補正の総額は30兆2千億円に達する。当初予算では財政規律重視を装いつつ、補正を抜け穴にして歳出を肥大化させるまやかしが意図的に行われ、歳出改革や財政再建を遅らせている。補正予算も一体で歳出改革に取り組むことが不可欠だ。

 国と地方の長期債務残高は19年度末に最悪の1122兆円に達して財政は危機的状況だ。しかし、健全化議論はまたも先送りだ。

 政府は19年度から社会保障改革などを進めるための基盤固めを行うという。社会保障制度の持続可能性確保が景気を下支えし、持続的な経済成長を後押しするとも指摘している。それならなぜ、もっと早く取り掛からなかったのか。

 有識者でつくる財政制度等審議会の意見書は、平成の財政を失敗と指摘し「新たな時代の子供たちに、平成の財政運営をどう申し開くことができるだろうか」と記した。政治家も官僚も国民も、もう難題から逃げない覚悟が必要だ。

=2018/12/22付 西日本新聞朝刊=

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