北方領土交渉 「2島」「4島」議論を急げ

西日本新聞

 北方領土を巡る日本とロシアの交渉が加速している。

 安倍晋三首相とプーチン大統領が11月に会談し、日ロ間の平和条約について、1956年の日ソ共同宣言を基礎にして締結交渉を加速させ、お互いの任期中に決着を目指すことで合意した。

 これは北方領土交渉について、日本側が大きく方針転換をしたことを意味する。同宣言は北方四島(歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)、国後(くなしり)、択捉(えとろふ))に関して「平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す」と明記しているが、択捉、国後2島については全く触れていない。

 日本政府は公式には明言していないが、「色丹、歯舞の2島返還」を軸に、経済権益などを上乗せさせる「2島+〓(プラスアルファ)」を目標に交渉する方針とみられる。「4島返還」にこだわってきた日本側が大幅な譲歩をしたことで、交渉が動きだした格好だ。

 これを受けて、日本では北方領土問題に関わってきた政治家や識者が「2島+〓(アルファ)」論と「4島」論に分かれ、論争を始めている。

 安倍政権は早ければ来年6月に見込まれるプーチン氏来日に合わせ、北方領土交渉をまとめて平和条約締結にこぎ着けたい構えだ。しかし、国民の議論はこの急展開に付いていっていない。

 ここでまず「2島+〓(アルファ)」論と「4島」論の主張を紹介して論点を整理し、議論の糧としたい。

 ●「現実的な解決策だ」

 「2島+〓(アルファ)」での決着を訴える論者たちの主張をまとめると、おおむねこういうことになる。

 「これまでの交渉の経緯を見れば、ロシアによる4島返還は不可能に近い。現実的に可能性があるのは『2島+〓(アルファ)』だけだ」

 「安倍首相、プーチン氏ともに政権基盤が強い。この2人が乗り出した今回の機会を逃せば、日ロ間の領土問題解決の道は閉ざされる。先延ばししても日本にとって条件は悪くなるばかりだ」

 「歯舞、色丹と国後、択捉の間に国境線を引き、歯舞と色丹を日本の領土とする。国後と択捉はロシア領土と認めた上で、経済活動や元島民の往来などで日本に特別の地位を認める制度(+〓(アルファ))を作ればいい。元島民は高齢化しており、早く決着をつけるべきだ」

 「これからの日本の安全保障における最大の脅威は中国だ。ロシアと平和条約を締結することで関係を安定させれば、『対中国』に全力を注ぐことができる」

 ●「領土で譲歩は禁物」

 一方、「4島」論者たちの主張は、だいたいこんなふうにまとめることができる。

 「ソ連は日ソ中立条約を破って対日参戦し北方四島を不法に占拠した。4島の返還を要求するのは国際正義の実現をロシアに突き付ける意味がある。近い将来ロシアが4島返還に応じる可能性は小さいが、原則を曲げてはならない」

 「そもそも領土については絶対に譲歩すべきではない。日本とロシアとの交渉を国際社会は見ている。もし北方領土でロシアに譲歩すれば、島根県竹島や沖縄県尖閣諸島の問題で韓国や中国が自信を強める恐れがある」

 「歯舞と色丹では北方四島全体の面積のわずか7%だ。残る93%の国後と択捉を放棄するのは譲歩し過ぎで、元島民も納得しない」

 「ロシアの外交交渉術は油断ならず、したたかだ。歯舞や色丹の日本主権でさえ認めるかどうか分からない。『+〓(アルファ)』どころか『2島マイナス〓(アルファ)』になりかねない」

 ●説明し理解を求めよ

 「2島+〓(アルファ)」論も「4島」論もそれぞれ理があり、弱点もある。要は国民がどちらを支持するかだ。面積なら「4島」の優位は明白だが、「2島+〓(アルファ)」での早期決着にそれを上回るメリットがあるかどうか。その判断が鍵となる。

 押さえておきたいのは、2島を返還させた後に国後、択捉についても返還協議を続けるという「2島先行」論は、事実上交渉のテーブルに上っていないとみられることだ。日本政府が「2島+〓(アルファ)」論に「国後、択捉にも望みがある」ような説明をするのなら、それはごまかしである可能性が高い。

 河野太郎外相が先日の記者会見で、日ロ交渉に関する記者の質問に答えず「次の質問どうぞ」と繰り返した。手の内を明かしたくない気持ちは分かるが、領土交渉に向かう方針さえ明らかにせず、後で結果だけ認めろという態度は、主権者である国民を軽んじていると言うほかない。

 安倍政権が早期の交渉妥結を目指すなら、年明けの通常国会で率直に方針を説明し、まず国民の理解を求めるべきである。

=2018/12/24付 西日本新聞朝刊=

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