【産業医が診る働き方改革】<31>保健師は社員の伴走者

西日本新聞

 社員約400人の電子部品メーカーでの出来事です。嘱託産業医は週1回勤務し、普段は保健師の私が常駐していました。

 脳梗塞を発症した長尾大介さん(56)=仮名=は、左半身まひが残り、長期リハビリが必要になりました。会社は長尾さんの復職を見据えて準備する方針を決め、私が中心的な役割を任されました。

 長尾さんが治療に専念できるよう、定期的に面会に行き、仕事や経済面などさまざまな相談に乗って不安の軽減に努めました。長尾さんを支える妻とも連絡を取り、話を聞くようにしました。妻にとって、身内に相談できないことや自分の体調について話せる保健師の存在は大きく、前向きに夫をサポートできるようになりました。

 約1年半後、大きな改善はないまま、リハビリは終了しました。私は長尾さんに職業訓練センターを紹介し、職業訓練を始めてもらう一方、社内での受け入れ準備を進めました。復帰予定の職場の同僚に過度の不安や負担感を与えないことが大切です。このため、長尾さんの障害の程度、具体的に協力してほしいことなどを詳しく説明し、理解を得ました。

 また、非常時の長尾さんの付き添い役、更衣や食事時のサポート役、仕事の相談役などを同僚社員の特性に応じて依頼。それぞれが「自分の役割は重要だ」と実感しながら、長尾さんを迎え入れる雰囲気を醸成していきました。設備改修なども行われ、同僚たちは「自分に何かあった際も会社に支援してもらえる」という安心感を抱いたようです。長尾さんは無事に復職し、勤務を続けています。

 さらに、社員の「病気予防に力を入れたい」という意識の高まりを感じた私は、この機を捉え、職場体操や分煙対策を推進しました。健康づくりの取り組みは大きく前進したのです。

 職場の保健師は、組織全体に目配りしながら、社員一人一人を見守り、必要なときにはカウンセラー、コーチ、マネジャーなどさまざまな役割を果たします。何かあったら、産業医と共に社員の人生に伴走する保健師に話してみませんか。

 (中谷淳子=産業医大教授)

=2018/12/17付 西日本新聞朝刊=

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