なぜ安い?「パック旅行」お得の裏側 ホテルや交通機関にもメリット

 往復の航空券や新幹線チケットと宿泊がセットになった「パック旅行」。その価格は、羽田-福岡の航空券とホテル1泊で「1万9800円から」といった具合に驚くほど安いことがある。「どうしてこんなに安いのだろう」。特命取材班に寄せられた疑問に応え、「お得な旅」の仕組みを取材した。

 「代理店の集客力を頼りにしていただいている、ということだと思います」。西鉄旅行(福岡市)商品企画部の中島恵南さんは説明する。

 一般的な仕組みはこうだ。代理店は、交通機関や宿泊施設から、割安な価格で座席や部屋の提供を受け、セットにして個人客に販売する。価格は時期により変動するが、個人で手配する場合の7~8割程度に収まることが多い。閑散期の平日なら、交通機関のチケット代単独より宿泊費を含むパック料金が安いことさえある。

 代理店は販売額の10~20%程度を手数料として供給元から受け取る。販売目標は事前に打ち合わせることが多いが、一般的に、目標に達しなくてもペナルティーはなく、売れ残っても買い取り義務はない。かなり代理店優位の商慣行といえる。

 ではホテルや交通機関にとってのメリットは何なのか。やはり最も大きいのは、代理店の強力な販売網を使って商品をさばける点。「自社だけではとてもさばけない量を売ってもらえる。広告宣伝費と考えれば、格安に卸しても十分に引き合う」とホテル業者。さらに「相場の値崩れを防ぎながら、空き室を処分できる」ことも大きい。

 業者の側は「部屋を空けておくぐらいなら、通常1万円の部屋を3千円にしてでも売りたい」のが本音。しかし室料などを単独で大幅値引きして売るとイメージが傷つきかねない。パック旅行なら、セット料金なので個別の値引き率が目立たない形でさばける。

 またパック旅行はキャンセル率が低いので、安く提供してもそれだけのメリットがあるのだという。

 どの程度の量を代理店に卸すか、どれだけ値引きするか、といった点は、供給元の販売戦略や代理店との力関係で異なるそうだ。

 しかし最近は、こうした事情に変化が見えてきた。

 福岡市内を中心に25施設前後のホテルを運営するSHI(福岡市)は11月現在、パック旅行向けには部屋を供給せず、インターネットの宿泊予約サイトだけで販売している。

 同社は既存のマンションなどを1棟丸ごと宿泊施設に転用。キッチン、冷蔵庫、洗濯機を備えた広い客室を売りに、月平均95%以上の客室稼働率を維持している、という。斎藤仁代表取締役は「画一化された宿泊パックより、自分に合った部屋を探せるネット販売の方が、今の消費者のニーズに合うのでは」と話す。

 実際、昨年の電子商取引による旅行サービスの市場規模は3兆3700億円(経済産業省調べ)と、2013年と比較し4割近く拡大している。

 それでもパック旅行はまだまだ存在感を失ってはいない。理由について福岡市内のビジネスホテルの担当者は「リスク管理」を挙げる。たとえば16年の熊本地震発生時、九州の旅行需要は大きく落ち込んだが、担当者のホテルは被災状況を確認するため現地入りした保険会社関係者などの宿泊需要を、代理店経由で獲得できたという。「日頃からの付き合いがないと、いざというとき助けてもらえませんから」と担当者。「お得」の裏側を垣間見た気がした。

=2018/12/25付 西日本新聞朝刊=

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