国際捕鯨委脱退 孤立招かぬ最大の努力を

西日本新聞

 日本政府が、クジラの資源管理を行う国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、来夏から商業捕鯨を再開することを決めた。

 脱退後は、南極海と太平洋の公海上で行っている調査捕鯨を中止する一方、日本の領海と排他的経済水域(EEZ)で商業捕鯨を行うという。

 国際協調主義を掲げる日本が、国際機関から脱退するのは極めて異例の措置だ。IWCの本来の理念が変質し、過半数を占める反捕鯨国との対立も先鋭化する中、残留していても商業捕鯨の再開はおろか、今の調査捕鯨すら継続できない懸念がある-と見切ったようだ。

 確かにIWCは現在、機能不全状態にある。しかし脱退の代償もまた大きい。従来の方針を転換するのなら、政府は、日本の捕鯨や関連産業を今後どうするのか、脱退による国際社会での得失を含め国民に丁寧に説明する必要がある。

 IWCは、クジラの資源保護と持続的な利用を目的に1948年に発足し、現在、89カ国が加盟している。

 82年にはクジラの生息数回復のため、商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を決め、日本は88年に商業捕鯨から撤退し、前後してクジラの資源状況を調べる調査捕鯨を開始した。現在、南極海と北西太平洋でミンククジラなど年間約630頭を捕獲している。

 日本は、調査で資源の回復が確認された種類に限り、捕獲枠に基づく商業捕鯨再開を求めてきたが、オーストラリアや米国、欧州などの反捕鯨国が反対し、今秋のIWC総会では、商業捕鯨再開は「不要」とする宣言も採択されていた。

 世界的に水産物需要が高まる中、今や国際的な漁獲量管理は不可欠だ。科学的な資源調査データはその指針だ。それなのに感情的にクジラを食べる文化やデータに基づく捕獲にまで反対する反捕鯨国の対応は理解に苦しむ。クジラが大量の魚類を食べる食害も報告されている。

 よって脱退が理解できないわけではない。とはいえ脱退は国際社会における日本の針路として得策なのか。もっと多面的に議論する必要はなかったか。

 脱退すれば、南極海での調査捕鯨、データ蓄積も不可能になる。逆に科学的資源管理・利用への道を狭めはしないか。

 今後、高まるであろう反捕鯨国の圧力や反捕鯨団体の抗議にどう対処し、国際社会をどう説得してゆくのかも難題だ。外交への影響も考えられる。

 政府は脱退後、他の捕鯨国と一緒に新国際機関をつくることも検討しているという。国際社会に背を向けず、孤立を招かない最大限の努力を求めたい。

=2018/12/27付 西日本新聞朝刊=

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