天神見守る老舗に幕 福ビル地下の喫茶「EST」

西日本新聞

 都心部再開発事業「天神ビッグバン」でビルの建て替え計画が進む福岡市・天神。新たな街づくりのつち音が響く平成最後の師走に営業を終える店もある。建て替えに伴い来年3月に閉館する福岡ビルでは、地下飲食店街で半世紀以上営業してきた喫茶店「喫茶洋食EST(エスト)」が28日で閉店する。昭和から平成までオフィス街で働く人や買い物客に憩いのひとときを提供してきた老舗。閉店を惜しむ常連客らでにぎわう。

 常連、名残惜しむ

 エストは、1962年1月の福ビル開業と同時期に営業開始。福ビルにはその後、レストランの「ロイヤル」、岩田屋(現岩田屋三越)と西日本鉄道が共同出資したインテリアショップ「ニック」などが店を出し、福岡の若者にとっておしゃれで憧れの場所だった。

 店長の折手孝法さん(61)は、古くから店を訪れる高齢夫婦の話で往時に思いをはせる。「結婚前、西鉄福岡(天神)駅の隣にあった福岡スポーツセンターでデートをして、エストで食事をするのが何よりの楽しみだったそうです」

 店内の壁にはれんがが張られ、弧を描く天井はアールヌーボーをほうふつとさせる。経営者の佐藤文夫さん(71)は15年ほど前、知人から店を引き継いだ。「今の若い人には古くさく感じるかもしれないが、歴史を感じさせるしつらえ」と思い出が詰まった店をいとおしむ。

 天神周辺にも大手コーヒーチェーン店が増えた。それでも、なじみ客には「疲れた様子の人には少し薄めに、酔いざましに来た人には少し濃いめ」のコーヒーをそっと出す折手さんの気配りが客を離さない。20年近く通う大隈雅生さん(74)は「ゆっくりと時間が流れる雰囲気が自分にはぴったりだった。なくなるのは惜しいね」と残念がる。

 福ビル閉館が決まり、佐藤さんはエストの移転を考えたが、周辺は家賃が高いことなどから、隣で経営する定食店「華」と共に年内で店を畳むことを決めた。

 店に「閉店のお知らせ」を掲げたのは閉店3日前の今月25日。「いつも通りの雰囲気で、最後を迎えたいと思ったから」。仕事帰りに一息つく女性、親子3代にわたって来てくれた家族連れ。天神の街を行き交う人々を見守り続けた店の明かりが間もなく消える。

 ◆他の店舗も移転や閉店進む

 昼休みや仕事の後にサラリーマンの胃袋を満たしてきた福岡ビルの地下飲食店街。2019年3月末の閉館に向けて閉店や移転が進む。

 昨年末以降2店が閉店し現在8店が営業中。ランチの時間帯に行列ができることも多いお好み焼き店「ふきや」は、19年2月14日まで営業し閉店。1998年から麺料理の提供やかまぼこ販売をしている「麺処 峰松本家」は3月末で閉店し、博多区の本店のみの営業となる。和食を中心に提供する「天神御膳屋」は今年12月30日で営業終了。建て替え後のビルにも「入店する予定は今のところない」という。

 移転か閉店か決まっていない店もある。そば店「戸隠」は「3月末以降、どうなるかは未定」。海鮮を使った和食が売りの「海幸」も「検討中」という。

=2018/12/26付 西日本新聞夕刊=

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