南海トラフ地震 「高台へ逃げろ」徹底せよ

西日本新聞

 とにかく高台に逃げる-。この大津波への簡素で最大の対策を、対象地域の全域で徹底することが何より肝心だ。

 海溝型の南海トラフ巨大地震への対応を巡り、政府・中央防災会議の有識者会合が報告書をまとめ、防災相に提出した。

 政府は昨年、事前の避難につながる数日から数時間前の地震予知について、「現在の科学的知見では困難」として断念した。代替策として有識者会合は、巨大地震の前兆と疑われる異常現象が起きた場合の対応策を検討してきた。

 報告書は、「半割れ」と呼ばれる地下の岩盤破壊が起きた場合などを巨大地震の「前兆」と定義した。「半割れ」とは、東海沖から九州沖にわたる想定震源域内の東側か西側でマグニチュード(M)8級の地震が起きるケースを指す。その場合、被災していない側でも一斉避難を促すという。連動して地震が起き得るからだ。地震発生から30分内に30センチ以上の津波が到達する場所を想定している。

 震源域のどこかでM7級の地震が起きる「一部割れ」の場合は自主避難を基本とする。政府はこうした対応策を含め、「前兆」から最短2時間で「臨時情報」として発表するという。

 専門家以外が、どこまで理解できる内容だろうか。襲来するかもしれない津波から逃げるという切迫感は伝わるのか。とりわけ「一部割れ」の場合の自主避難は、各自治体はもちろん、個々の企業や住民個人レベルに、どういう行動を取るべきかの判断が委ねられる。それぞれで具体的な詰めが必要だ。

 政府は臨時情報の発表に伴う混乱を避けるため、新たな防災計画の策定を、被害が予想される29都府県に求めていくという。九州は福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島の5県だ。

 重要なのは、子どもにも分かる言葉でポイントを整理することだ。東日本大震災では岩手県の小中学生約2900人が津波から高台などに逃げて無事だった。「迷わず逃げろ」を合言葉にした日頃の訓練が生きた。

 南海トラフ地震が30年以内に発生する確率は70~80%程度と極めて高い。津波の高さは大分県佐伯市や宮崎県串間市で15メートル前後と想定されている。東日本大震災や熊本地震をはるかにしのぐ被害も起こり得る。

 近年の災害で何度も経験した「想定外」の事態を教訓にしたい。九州一体で対応する発想も当然必要だ。浸水地域の想定、高台の整備、避難場所の確保などをさらに急ぎたい。避難勧告などが出されても「自分だけは大丈夫」と考えて動かない人は多い。啓発を含め、きめ細かに対策を組み立てたい。

=2018/12/28付 西日本新聞朝刊=

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