電気代節約で料金2倍以上も…農家困惑 ブレーカー販売業者とトラブル急増

西日本新聞

イチゴ「あまおう」。平成時代に高級イチゴの代名詞となった

 「電気代を節約できるという『電子ブレーカー』を設置したら、逆に電気料金が高くなった」。福岡県筑後地方のイチゴ農家の男性(67)から、特命取材班に困惑の声が寄せられた。途中解約もできないという。調べてみると、平成の「あまおう」ブームの中、設備投資を繰り返してきた農家が陥りがちな“落とし穴”が浮かび上がった。

 電子ブレーカーとは、電流値を監視・制御し、結果的に電気料金を安くさせるという機器だ。男性宅に営業マンが訪ねてきたのは、今年11月のこと。2基で1基当たりの単価は70万円、7年間のリース契約。男性はすぐに契約した。

 後日、契約書類をよくよく見直すと、「削減プラン」と銘打つものの、月額基本料金が従来の2倍以上になる内容になっていた。

 取材班は、同じ業者と契約した近隣農家十数人に会った。多くは60代後半。40年ほど前にイチゴ栽培を始め、平成に入って高級イチゴの代名詞となった「あまおう」を栽培している。大半がブレーカー導入後に電気料金が上がったという。

 下がるはずの電気料金がなぜ上がったのか。書面を見れば分かるはずなのに、農家はなぜ契約したのか。

 男性は打ち明けた。「電力会社との契約違反を指摘されて驚き、深く考えることなく決めてしまった」

 どういうことか。

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 「九州のビニールハウス農家には、電力会社に申請せずに設備を増設しているところが多いのです」。販売業者に質問状を送ると、役員が取材に応じた。

 農家と電力会社との契約は、ポンプや冷蔵庫など全ての動力設備を申請し、それに基づき基本料金を設定する仕組みになっている。

 現実には、あまおう人気もあって設備の増設を重ねるうち、動力機器の追加を電力会社に申告し漏らすケースが少なくないという。申告は一般的に、設備を納入した電気工事店が行うことが多く、ある農家は「ブレーカー販売業者に未申請を指摘されるまで、違反と知らなかった」と話した。

 つまり、ブレーカーの導入をきっかけに「契約違反」の状態は解消されたものの、基本料金がはね上がり、電気料金の節約にはならなかったというわけだ=イメージ図。

 九州電力の約款には、申請した動力機器以外で電気を使った場合「免れた金額の3倍相当額を、違約金として申し受ける」とある。九電は取材に「聞き取りの上、請求するかはケース・バイ・ケース」とした。

 複数の農家によると、営業マンからは「電力会社から高額の違約金を請求されるかもしれない」と説かれたという。

 男性が九電に問い合わせると「さかのぼって料金を請求することはない」と言われた。ブレーカー契約によって、違約金を支払うより安価に済んだ可能性もあるが、九電に正直に申告すれば違約金は発生せず、リース代も不要だったかもしれない-。「あと7年、農業を続けられるかも分からないのに…」。男性は肩を落とした。

 農家の現状を把握し、契約違反を忠告して売り込む手法といえる。業者は「契約者の9割以上は電気代が安くなったと喜んでいる。(農家が)電子ブレーカーを契約せず、約款に違反し続けた方がよかったと後悔されているのならば、本末転倒では」と反論した。

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 電子ブレーカーを含め、節電効果を掲げた機器を巡るトラブルの相談は少なくない。国民生活センターによると、過去10年間で約3千件に上る。農家を含む事業者の取引は、一定期間内なら無条件で解約できるクーリングオフ制度の対象外で、対応が難しい。

 福岡県警筑後署はイチゴ農家にチラシを配布し、「ブレーカー販売業者との契約に関するトラブル急増」と注意を促している。対策として(1)内容を理解できないものは契約しない(2)その場で即決せず、家族などに相談する(3)訪問販売を受ける場合はスマートフォンなどで会話を録音する-を挙げている。

=2018/12/31付 西日本新聞朝刊=

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