【産業医が診る働き方改革】<32完>生き生きと働くために

西日本新聞

 「健康的な働き方」を考える連載も今回が最終回です。全国で唯一、産業医を育成する産業医科大(北九州市)の教授陣が、産業医ができるサポート、禁煙などの職場改善策、働く人が自分でできる疾患予防などについて紹介してきました。

 従業員が50人以上の事業場には法律で産業医の関与が義務付けられています。産業医は働く人の健康を守る、いわば職場の「かかりつけ医」です。

 現在、元気な日本をつくる重要政策として「働き方改革」が進められています。これに伴い、労働安全衛生法も改正されました。長時間労働や強いストレスによる健康への影響を防ぐため、健康管理の専門家として産業医の役割と権限が強化されました。経営者は働く人の健康を守るために必要な情報を産業医に提供し、産業医は経営者に対して手順を踏んで必要な対策を勧告しなければなりません。

 働くことは個人が社会参加することにつながります。特に、東洋の人にとっては最大の健康維持・増進に役立つもののようです。年齢を重ねても賢く働き続ければ、社会に貢献するとともに生きがいを持ち続けることができるのです。

 がんを患いながらも、亡くなる2カ月前まで仕事を続けた女優の樹木希林さん(享年75)、最後まで将棋の最高クラスA級に在位した大山康晴15世名人(享年69)は、健康寿命を全うしたといってもいいのではないでしょうか。大山名人は「将棋指しの健康とは将棋盤の前に座って10時間考えられること」と言ったそうです。

 さて、産業保健の目的を一言で表すなら、広義の「適正配置」と考えています。それぞれの職場で働きやすい環境をつくる。働く人も自己の力、ワークアビリティー(働く技量)を研ぐ。その上で、誰もが力を発揮して生き生きと働き続けられるように助けるのが、産業医など産業保健スタッフの役割です。

 産業医がいる会社ではぜひ顔と名前を覚えてください。そして、皆さんの生きがいを実現できる職場の創造にどんどん役立ててください。

 (東敏昭=産業医大学長)

 =おわり

=2018/12/24付 西日本新聞朝刊=