【福岡コンフィデンシャル】「電光石火」の武内氏選出劇

西日本新聞

自民党県連の推薦候補に決まった武内和久氏(前列右から2人目)と大家敏志選対委員長(同3人目)。武内氏の党本部推薦はあるのか 拡大

自民党県連の推薦候補に決まった武内和久氏(前列右から2人目)と大家敏志選対委員長(同3人目)。武内氏の党本部推薦はあるのか

 暮れも押し迫った昨年12月29日昼、福岡市博多区の自民党県連事務所。県連選挙対策委員会の委員約10人が集う一室に、委員長の参院議員、大家敏志の声が響いた。「そんなことをしている時間はない。早く決めないとだめだ」

 県連は、同21日から県知事選の推薦候補について公募を開始。期限の28日までに4人の応募があり、うち書類審査を通った3人を29日午前に面接した。

 大家が発言したのは、面接後の選考作業のときだった。出席者によると、元厚生労働省官僚の武内和久と九州大教授の谷口博文の評価が拮抗(きっこう)。そこで、ある委員が「武内と谷口にテーマを与えて討論させてはどうか」と提案したのだ。

 だが、大家は一蹴。委員長一任を取り付け、武内を選出した。武内の代理人が県連に応募書類を持って駆け込んだのは28日夕。締め切りのわずか5分前だった。それから1日もたたず、「電光石火」の候補決定劇となった。

 「武内の若さはいいアピール材料」「夢を語れる候補だ」。県連内からはこんな声が上がる一方、「話ができすぎだ。最初から武内にするつもりだったんじゃないか」と疑問を呈す選対委員もいる。

 大家と、大家が所属する派閥の領袖(りょうしゅう)、麻生太郎は昨年の早い段階から現職知事小川洋の対抗馬擁立へ人選を進めていた。その過程で、麻生と関係のある会社の顧問を務めていた武内の名が浮上したこともある。

 だが、武内は出馬を否定し続け、公募開始後も地元民放の番組にコメンテーターとして出演していた。民放関係者は「武内さんは『公募に応じる腹を決めたのは28日朝だ』と言っている」と打ち明ける。

 大家は12月21日、都内で麻生や県連幹部らに「びっくりするような(知事選)候補がいる」と伝えている。それが武内だったのか-。大家自身は口を閉ざしたままだ。

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 年が明けて今月3日夜。東京・富ケ谷にある首相安倍晋三の私邸を麻生が訪ねた。麻生の滞在時間は1時間半。関係者によると、2人の話題の中心は選挙で、福岡県知事選にも多くの時間が割かれたという。ある党関係者は、このときの面会で麻生が安倍から武内への党本部推薦の内諾を得たと話す。

 9日に党本部で開かれた選対幹部会合。大家は「麻生副総理の絶対命題ですから」と切り出し、武内の推薦を求めた。ただ、党選対は27日投開票の山梨県知事選に集中することなどを理由に対応を先送り。武内を推薦するかどうかは保留されている。

 会合後、大家は県内の団体幹部らに「武内で決まりましたから」と言い広めている。ただ、選対委員長の甘利明は記者団に「結論を近いうちに出すということまでしか決まってない」と強調。周囲には「選挙はデータなどを見て客観的に判断する」と話している。党は今月中旬にも世論調査する方針だ。党関係者は「2月10日の党大会ぎりぎりまで決まらない可能性もある」との見通しを示す。

 県連内には、知名度で小川に劣る武内の推薦を党本部が認めるか懐疑的な見方が少なくない。今年に入り、県医師会の政治団体が小川推薦を決めるなど、自民の有力支援団体も相次ぎ小川支持を打ち出している。県議らは知事選と同時期に県議選を控えており、知事選への対応は自身の票に直結する。小川、武内の保守分裂選挙になれば、影響は避けられない。

 最近、福岡市内であった財界の賀詞交換会に顔を出したある県議は、同席した重鎮県議に指示を仰いだ。返ってきた答えは予想通りだった。「1月中は様子見だ。動かなくていい」 (敬称略)

=2019/01/12付 西日本新聞朝刊=

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