意識戻らず5年の女性…成人式に参加へ 市を動かした友人の熱意

西日本新聞

手作りの晴れ着を試着した石田望美さんに寄り添う(左から)姉の亜祐美さんと母幸美さん。右が友人の日浅萌弓さん=12日午後、北九州市小倉南区の病院 拡大

手作りの晴れ着を試着した石田望美さんに寄り添う(左から)姉の亜祐美さんと母幸美さん。右が友人の日浅萌弓さん=12日午後、北九州市小倉南区の病院

 14歳で突然倒れ、意識が戻らないままの北九州市の女性が13日、成人式に出席する。入院以降、初めての外出。女性が倒れた時に一緒にいた友人は「重い障害がある人でも式に参加できるように」と実行委員会に入り、市と折衝を重ねた。母と姉は寝たきりでも着られる晴れ着を手作りした。女性も周囲の思いに応えるように、一時心室細動を起こして出席が危ぶまれたが持ち直し、病院からは外出許可が得られた。

 2013年秋、中3だった石田望美さん(19)は、同市門司区の公園で友人の日浅萌弓(もえみ)さん(19)と合唱コンクールの練習をしていた。2人で歌い合い、ノートを取り合ってふざけた。追い掛けてきているはずだと日浅さんが振り返ると、望美さんは地面に倒れ動かなくなっていた。

 望美さんは救急車で病院に運ばれたが、意識が戻ることはなかった。原因は今も分からず、家族は医師から「99%意識は戻らない」と告げられた。重度の昏睡(こんすい)状態が続く遷延(せんえん)性意識障害の症状。約5年2カ月間、寝たきりになっている。

 明るく友人も多かった望美さんは、不登校だった日浅さんに声を掛けてくれたという。「彼女に何もできなかった」と自分を責める日浅さん。お見舞いは絶やさなかった。望美さんのために何かしたい。成人式の実行委員の一員となり、市内の会社で働きながら市側に働き掛けた。日浅さんの熱意に、市も救護室を準備するなど、式出席を支えることになった。

 望美さんの母、幸美さん(54)は、節目の成人式を迎えるまな娘の姿をずっと夢見ていた。

 一日も欠かさず病院に通い、娘の関節を動かしたり、体をさすったりと、奇跡を信じてリハビリを続ける日々。それでも「高校に通わせて、お弁当を作って…。してやれることができなかった」と悔やむ。

 日浅さんの尽力もあり、成人式に出席できるとの連絡を受け、幸美さんと姉亜祐美さん(23)は晴れ着を手作りした。よだれで汚れるのでレンタルできないからだ。譲り受けた和服を寝たままでも着られるよう帯を切り、襟を縫い付け、晴れ着に仕立てた。柄には、ラメを付け加えて見栄えにもこだわった。

 望美さんは13日、車椅子に乗り、看護師が付き添って式に参加する。幸美さんは「14年しか人と関わっていない娘に、どんな形でも人との出会いをさせてあげたい。娘は話せないけど、多くの若い人たちに命の大切さを伝えられる」。日浅さんは「寂しい思いを誰にもさせたくない。誰にでも晴れの日がある」。思いを胸に一緒に式に臨む。

=2019/01/13付 西日本新聞朝刊=

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