気前が良過ぎませんか

西日本新聞

 何と景気のいい話であろうか。いや、マグロの初競りの話題ではない。政府が昨年末に発表した新防衛大綱と中期防衛力整備計画(中期防)のことである。

 政府は米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35を現行の42機体制から147機体制にするという。新たに105機買い足すことになる。F35の値段は1機116億円。つまり総額約1兆2千億円のお買い物なのだ。1兆円ですよ、1兆円。

 中期防に盛り込まれた米国製高額兵器はこれだけではない。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」は1基1224億円。2基導入なので2448億円なり、である。

 日本政府はこうした最新兵器を主に米国の対外有償軍事援助(FMS)という制度で購入している。この制度だと値切りにくく「言い値で買わされる」傾向があるという。FMSによる兵器購入は、2019年度予算案で7013億円に上る。5年前に比べて3・7倍の急増ぶりである。

 財政に余裕があるならともかく、消費税率が引き上げられる時代に、米国にはこの大盤振る舞いだ。

 少し気前が良過ぎはしませんか。

   ◇    ◇

 安倍晋三政権による米国製兵器「爆買い」の背景にあるのは、もちろん「バイ・アメリカン(米国製品を買え)」を掲げるトランプ米大統領からの圧力だ。

 2017年11月に来日したトランプ大統領は、記者会見であからさまに米国製兵器購入を要求した。

 「(日本は)米国からさまざまな防衛装備を購入することになる。多くの雇用が米国で生まれるし、日本がもっと安全になる」

 最近は、こんな解説もある。安倍政権は米国製兵器を大量に買うことで、貿易赤字解消を最優先するトランプ大統領の怒りの矛先をかわし、日本車に高関税をかけられるのを防ごうとしている-。そんな高等戦術だというのだ。

 一見戦略的のようだが、米国の産業界からは、日本はこう見えていることだろう。「大統領がちょっと車の関税で脅せば、戦闘機を1兆円買ってくれる国」

   ◇    ◇

 「軍産複合体」という言葉がある。兵器を必要とする軍・国家と、兵器を生産する産業が強く結びついた状態を指す。米国ではこの「軍産複合体」が国家政策をゆがめているとの指摘がある。平和が続けば軍需産業はもうからない。だから米国は戦争と軍拡をやめられない、という見方だ。

 私が最近感じているのは「米国の軍産複合体の構造に、日本がすでに組み込まれているのではないか」という不安である。

 米国と中国が軍拡競争をする。安倍政権下で米国との軍事的一体化を強める日本は、米国側に立って中国との軍拡に参加せざるを得ない。防衛費は膨らむ一方で国民生活を圧迫するが、米国の軍需産業は笑いが止まらない-。そんな未来が見えてきそうだ。

 どこかで日本が米中の橋渡しをして、軍拡から軍縮へと局面を転換しなければ「軍需産業栄えて国滅ぶ」にならないか。実際に旧ソ連は、米国と国力以上の軍拡競争を繰り広げた結果、国家が崩壊したのだ。

 国と地方の借金は合計で1千兆円を超えている。日本は財政的にも「軍縮」しか選べないはずなのだが。

 (特別論説委員)

=2019/01/13付 西日本新聞朝刊=

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