勤労統計の手法変更、課長級が通知 昨年6月、3府県に 厚労省が組織的関与?

西日本新聞

 毎月勤労統計の不適切調査問題で、厚生労働省が昨年6月に神奈川、愛知、大阪3府県に対して、従業員500人以上の事業所の全数調査を抽出調査に切り替えるとの通知を課長級の「政策統括官付参事官」名で送っていたことが15日分かった。不適切調査が組織的に行われていた可能性が強まった。総務省は不適切調査が統計法に抵触する可能性を指摘しており、弁護士などが参加する厚労省内の監察チームが原因究明を急ぐ。

 厚労省によると、3府県には2019年1月から抽出調査に変更するとの通知と調査対象事業所のリストを18年6月に送付。問題発覚を受けて同12月に撤回した。厚労省は不適切調査を「一部職員は認識していた」と説明していたが、課長級の幹部も含まれていた可能性がある。

 一方、同日の自民党厚生労働部会では、総務省の担当者から、東京都で04年から不適切な調査が実施されていたことなどが統計法違反に当たるとの認識が報告された。統計法では勤労統計などの基幹統計について、調査手法に変更がある場合などは総務相の承認を得るよう規定しているが、厚労省は変更を届け出ていなかった。違反すると50万円以下の罰金または6カ月以下の懲役が科せられる可能性があるという。

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内閣府統計も再修正へ

 厚生労働省の毎月勤労統計の不適切調査問題を受け、内閣府は同統計を基に算出している別の統計「雇用者報酬」の公表値を修正する方針だ。昨年11月の修正に続く極めて異例の対応を迫られ、関係する経済指標の数値も見直さざるを得ない事態。経済政策や景気判断の前提となる統計の信頼性が大きく揺らぎ、安倍政権の政策運営への疑念も膨らんでいる。

 雇用者報酬は賃金動向を示す重要な経済指標。政府がデフレ脱却の判断でも重視する指標として、四半期ごとに国内総生産(GDP)と同時に公表される。毎月勤労統計の賃金上昇率が昨年1月分から高めに出た問題を受けて過大推計となっていたことが発覚し、同1~3月期と4~6月期の前年同期比上昇率を既に下方修正していた。

 内閣府によると、厚労省から昨年12月19日に「調査が不適切だった可能性がある」との連絡があり、再修正の必要性が浮上。今月下旬にも公表する方向で再計算を急いでいる。上昇率は既に修正しているため大きく変わらない見込みだが、金額水準が上振れし、家計貯蓄や企業の剰余金に関する指標も連鎖的に修正せざるを得ない状況だという。

 毎月勤労統計や雇用者報酬は、政府の毎月の景気判断にも影響を及ぼす。茂木敏充経済再生担当相は11日の記者会見で「基幹統計に問題が生じると正しい推計はできない」としながらも、景気判断については「全体の判断が一つの統計調査によって大きく変わるということはない」と強調した。

 ただ、民間のエコノミストからは「政府の統計がここまでずさんだと、何を信じていいか分からない」「日本が海外からの信用を失いかねない」といった声が噴出。政府は毎月勤労統計を含め計56ある国の基幹統計を総点検する方針だが、信頼回復は容易ではない。

=2019/01/16付 西日本新聞朝刊=

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