身寄りがない人の保証人代行 入院・入所手続き、付き添いも 「身元保証」 民間サービス広がる

西日本新聞

■公的支援の仕組み求める識者も

 身寄りがないため身元保証人を確保できず、医療機関や介護施設に入院・入所できない恐れがある人に、身元保証を代行する民間サービスが広がっている。単身高齢者の増加でニーズが高まり、国の調査では100事業者ほどが参入しているという。一方、有料のため利用できない低所得者もおり、識者には公的な支援制度を設けて官民で救済するよう求める声もある。

 「2月は健診がありますよ。付き添いますね」

 昨年末、福岡市の有料老人ホーム。ここで暮らす太田正治さん(74)の部屋を、身元保証サービスを提供する一般社団法人「えにしの会」(同市)の職員が訪れた。月2回程度の定期訪問の日。職員が体調を聞き取り、外出にも同行した。

 太田さんは2016年5月、サービスの利用を始めた。離婚し、きょうだいも高齢で身元保証人になれなかった。会が代行し、同8月にホームに入所できた。

 18年に大動脈瘤(りゅう)の手術をした際は、会の職員を交えて医師と治療方針を話し合った。十数時間の手術中、ずっと職員が立ち会った。持ち家を売却する手続きも会が担ったという。

 「ここに入るのも手術も、手続きは全部やってもらった。入会してよかった」と太田さんは言う。

 会は12年に発足し、全国11カ所に事業所を構える。利用者は入会金5万円と月会費3千円、身元保証サービス費25万円を支払うと、入院・入所時に保証人を代行してもらえる。他にも有料メニューで、緊急入院時や手術の立ち会い、日常生活の支援などを受けられる。身元保証の利用は17年度、会発足時の6倍の約300人に増えた。

 救いを求めるのは単身高齢者だけではない。夫の家庭内暴力に苦しむ高齢の妻や、子どもから年金を奪われる人の身元保証人となり、高齢者施設への転居を橋渡しすることもある。

 福岡事業所長の笠井久仁彦さん(47)は「身寄りのない人が、個人で入院などに備えるのは限界がある。親族がいても遠縁だと、『迷惑を掛けるから』と利用する人もいる」と語る。

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 医療機関や介護施設では、どの程度が入院・入所時に身元保証人を求めているのか。国の調査では、高い割合で本人以外の第三者を挙げるよう促していた。

 厚生労働省の研究班が17年度、医療機関約1300施設から回答を得た調査では、「身元保証人を求める」との回答が65%に上った。ベッド数が20床以上の病院では約90%。保証人を求める医療機関のうち8・2%は、保証人がいないと「入院を認めない」とした。

 介護施設を対象にした別の調査でも、回答した約2400施設のうち95%が、「入所時に本人以外の署名を求める」と答えた。

 身元保証人がいないと、医療機関や介護施設は入院費や利用料の支払い、滞納時の保証、緊急連絡先の確保、遺体の引き取り-などでリスクが生じるためだ。

 こうした傾向が、権利の侵害に当たるとする指摘もある。内閣府消費者委員会は17年1月、身元保証人がいないことを理由に入院・入所を拒むのは不適切とする建議を出した。厚労省はこれを受け、医療機関や介護施設に改善を指導するよう都道府県に通知した。

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 ただ、行政の対応は難しい。自治体は入院費などの滞納分を賄えず、身元保証人にはなれない。相談を受け、身元保証サービス事業者を紹介することも多い。

 福岡県の病院に勤務する医療ソーシャルワーカーの30代男性はそれでも、行政の関与を求める。入院申し込みで身元保証人がいない患者がいると、親族に連絡して引き受け手を探す。身元保証サービスを紹介することもあるが、利用できない患者もいる。「身寄りがないからと、医療を受けられない人がいるのは不平等。行政がこの問題に関わり、支援する仕組みを作ってほしい」と話す。

 厚労省の研究班で代表を務めた山梨大医学部の山縣然太朗教授(公衆衛生学)も同じ考えを示す。「身寄りのない人への対応は地域のサポートが重要。行政や医療ソーシャルワーカーなどが調整し、どうすれば入院できるか考える場を設けるべきだ。対応のガイドラインを医療機関や自治体で作ることも求められる」

 少子高齢化は頼れる身内が減ることにつながる。身元保証人のいない患者や高齢者は今後も増えそうだ。

 同朋大の林祐介専任講師(医療福祉論)は「行政が医療・介護現場の実態に即して法制度を整備することが基本。全てを代行サービス事業者に任せるのでなく、自治体が主導して病院や施設のソーシャルワーカー、社会福祉協議会を含めて支援ネットワークを形成し、対応の役割分担を行う必要がある」と話している。

=2019/01/16付 西日本新聞朝刊=

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