「おせっかい屋さん」続ける男性…ネットで相手募り人助け きっかけは妹の死

西日本新聞

止めた車の中で電話をかけるよっちゃん。「運転中に寄せられる相談にもすぐ対応したい」と受話器を設置している=昨年12月、福岡市博多区 拡大

止めた車の中で電話をかけるよっちゃん。「運転中に寄せられる相談にもすぐ対応したい」と受話器を設置している=昨年12月、福岡市博多区

「私」事典“ワタシペディア” 平成の終わりに(3)

 深夜のファミリーレストラン。100キロ超えの分厚い体をスーツで包んだよっちゃん(59)=福岡県、仮名=は、息子より一回り若い女性と待ち合わせしていた。初対面だ。

 無精ひげに人懐っこい垂れた目尻。特技のおやじギャグで笑いを取った後、女性に問いかけた。「困ったことはありませんか?」「やりたいことはありますか?」。インターネットの掲示板で話し相手を募集する書き込みを始めて7カ月。会うことになった人には必ず同じ質問をする。

 これまで21歳から70代の男女10人以上に会った。車で片道2時間程度であれば、九州どこへでも会いに行く。目的は一つ、「人助けをしたいから」。そんな自らを「変人」と呼ぶ。

 行動のきっかけは妹の早世だった。小学3年のとき、家族7人で暮らす自宅が全焼し、全てを失った。小学1年だった妹は、周囲からの援助を誰よりもありがたがった。「大人になったら、もらった恩を返したい」。だが、妹の願いはかなわなかった。22歳のとき、白血病で他界した。

 手も足も耳も口もいらないから殺さないでくれ-。後に見つけた妹の日記には、そう記されていた。「僕は妹と違って冷めた人間だった。でも、その言葉で変わった」。妹の代わりに、何か人助けをしたいと考え続けたが、これというやり方を見つけられなかった。40代で脳梗塞を発症したが「生かされた」。リハビリや自営業の仕事が落ち着いた頃、ネットの掲示板と出合った。「おせっかい屋さん」という名のミッションを開始した。

 職場でのパワーハラスメントに苦しみ、退職させられた元保育士の20代女性は「おなかすいた」と肩を落とすので食事をごちそうした。息子を亡くし、「夢がない」と嘆く70代男性には「誰かの夢を手伝ってあげたら?」と背中を押した。離婚後、子どもと離れ離れになり、「精神を病み、仕事ができない」と涙する40代女性とは今後の生活設計を一緒に考えた。使ったお金は計100万円を超えた。

 過去を思い出したくない相手には根掘り葉掘り聞かないよう心掛けているが、おせっかいすぎて嫌われることもある。逆にマルチ商法の品を売りつけられそうにもなった。でも、確実に自分を必要としている人がいるから、やめない。
 会う人みんなを助けるわけではない。「どうにかして」と人頼みではなく、現状を自身で打破したい気持ちがあるかを見極める。「だから、人助けというより自己満足。暗い人が明るくなるって楽しいし、人との絆をもっと感じたいから」

 今の社会を「目の前の相手が転ぼうが、自分に害を与えないなら眼中にもない無関心な時代」と感じる。だから相手から「お礼をしたい」と言われると「あんたも困っている人がおったら助けてやり」と答える。

 不寛容な自己責任論が席巻する世の中に、自分の「愛」が循環する、と信じて。

 「無関心の反対は愛。世の中を変えるのは変人よ」

【メモ】人付き合い面倒、32%

 平成の30年間、少子高齢化による地域コミュニティーの崩壊は加速し、地方でも都市部でも人と人とのつながりは希薄化した。その半面、インターネットの掲示板や会員制交流サイト(SNS)は新たな出会いをもたらしている。児童買春など犯罪の温床や、匿名の書き込み拡散によるいじめ、中傷など悪意による「負」の側面も強いが、例えば大規模災害の発生時には行政や個人が情報発信し、人や物などの支援を募り、調整するなど「善意」を広める場にもなっている。

 困ったときに頼れる人はいるのか。博報堂生活総合研究所の調査(2018年)では、困った時・いざという時に助けてくれる友達がいる人は51.4%。一方で、人付き合いは面倒くさいと思う人は32.0%と過去最高を記録した。「おせっかい」が疎まれ、困っている人を「冷笑」するような風潮が強まっていくのは悲しい。

=2019/01/04付 西日本新聞朝刊=

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