アニメが生む新たな交流 「聖地巡礼」にぎわう唐津 ゾンビランドサガで話題

西日本新聞

登場人物のコスプレで「旧三菱合資会社唐津支店本館」を訪れ、ポーズを決める巡礼者 拡大

登場人物のコスプレで「旧三菱合資会社唐津支店本館」を訪れ、ポーズを決める巡礼者

アニメと同じ構図で写真を撮る巡礼者 鏡山展望台を訪れ、アニメの一場面と同じ構図で唐津の夜景を撮影してみた 「唐津市ふるさと会館アルピノ」で販売されている缶バッジなどの関連グッズ

 アニメのゆかりの地を訪れる「聖地巡礼」で、唐津市がにぎわいを見せている。佐賀県を舞台に、昨年10~12月に放送されたテレビアニメ「ゾンビランドサガ」で、主人公たちが暮らす街として描かれ、市内の随所が「聖地」となっているのだ。何が人々を駆り立てるのだろう。ともに巡礼しながら考えた。

 「ゾンサガ」は、ゾンビとしてよみがえった少女たちがご当地アイドルグループ「フランシュシュ」を結成し、佐賀を救うために奮闘する物語。私も全12話欠かさずチェックした。

 まず、フランシュシュが暮らす洋館のモデルとなった同市海岸通の「旧三菱合資会社唐津支店本館」(市歴史民俗資料館)へ。市街地から車で約15分。平日にもかかわらず巡礼者の姿がある。「うわ、そっくり!」。初めて見た建物の外観はもちろん、扉のデザインなども作中の描写通り。「本物」がアニメをまねたようだ。眺めている間にも、続々と車がやって来た。

 建物にカメラを向ける人は、撮影場所を変えたり、しゃがみこんだりしながら何かにこだわっている様子。「アニメと同じカットで撮っているんですよ」。男性キャラクター巽幸太郎のコスプレをした川崎市の会社員片倉卓哉さん(25)が教えてくれた。なるほど。気が付くと、こちらも夢中でレンズをのぞいていた。

 アニメに登場するのは名所だけに限らない。日常の何げない風景も描かれている。同市南城内のコンビニもその一つ。オーナーの山口淑子さん(82)は「20歳くらいの男の子に『外から写真を撮っていいですか』って聞かれた時はなぜだろうと思ったよ。巡礼なんて、不思議ねえ」。

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 人気アニメゆかりの地をPRして観光客誘致を図る「アニメツーリズム協会」(東京)によると、聖地巡礼が社会現象化してきたのは5年ほど前からという。

 国内では2000年以降、年齢層や性別などのターゲットを絞り込んだり、実際に存在する場所を描いたりするアニメ作品が活発的に作られ、作品に強く共感するファンが誕生。ファン同士のネットのやりとりで、舞台となった場所の特定が早くなったことも背景にあり、リピーターとなる人もいるそうだ。

 唐津市は、16年に放送されたアニメ「ユーリ!!! on ICE」で、主人公の故郷のモデルとなり注目を浴びた。市の調査では、放送終了後から約2年間で、聖地巡礼を目的に市を訪問したのは延べ6万人以上。うち約1300人が海外40カ国からだった。

 同協会によると、唐津市のように同じ地域が続けて異なるアニメのモデルになるのは稀なケースという。

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 ゾンサガの聖地の一つ、同市鏡の鏡山の展望台から市街地を眺めていた福岡市の女性(24)は、ユーリの巡礼を機に唐津に引かれ、年に数回は山のそばにある鏡山温泉茶屋に行く。

 同じく虹の松原の「からつバーガー虹の松原本店」で出会った大阪府池田市の神澤孝宣さん(39)は昨年12月以降、唐津巡礼は3回目。今回は聖地以外にも足を運び、呼子でイカを食べ、県重要文化財の「旧唐津銀行」も見学した。「佐賀のことなんて知らなかったけど、こうして地域の人やおいしい食べ物と巡り合えた。(訪れる人に対して)ウエルカムな場所はまた行きたくなる」と神澤さん。

 市は2月下旬、JR唐津駅の観光案内所にゾンサガの巡礼マップを置く予定。市観光課は「ファンのニーズを考え、唐津の良さを広めたい」としている。ちなみに駅前もフランシュシュが路上ライブをした聖地だ。

 虹の松原を後にして数時間後、神澤さんから「牧のうどんへ行きませんか」と電話があった。実はその店内と思われるシーンもアニメに出ていたとは、言われるまで気付かなかった。人とつながることで新たな発見があるのも聖地巡礼の魅力か。「行きます!」。思わず即答した。

=2019/01/17付 西日本新聞朝刊=

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