僕は目で音を聴く(34)目前で次男が大けが、パニック

 ある日、自宅マンションの1階玄関近くで、自転車に乗って遊んでいた次男が何かにつまずき、大きく転倒しました。大号泣していたので「おいおい、大丈夫か」と声を掛けると、頭から何かが噴き出して…。よく見ると赤く、鮮血でした。

 私は青ざめ、夢中で次男の頭を押さえました。ハンカチはなく、今でも手に伝わる生温かい血の感触がよみがえります。スマートフォンを持って出ていなかったので、一緒に居た長女に「(上階にいる)お母さんを呼んで!」と頼みました。

 自分で次男をどこかに運ぶ余裕もなく、ただ待つしかありません。死んでしまうのでは、と不安が脳裏を駆け巡り、今振り返れば、自分では冷静な判断ができなくなっていたと思います。ちょうど駐車場に住人の方を見かけたので、「救急車呼んでくれる?」とお願いしました。

 妻も自宅から降りてきて、10分ぐらいして救急車が到着。救急隊員と話ができる妻が同乗し、私は長女と長男とともに車で追い掛けるしかありませんでした。聞こえず、またスマホなど通信手段を持っていなかった自分の「非力さ」をあらためて痛感させられました。

 次男はあんなに大出血していた割に、頭をホチキスで1針縫うだけで済み、ようやく肩の力が抜けたことを覚えています。結果的に割と連絡がうまくいったので良かったけれど、もし、身近に人がいなかったら…。ゾッとします。以来、自宅近くを散歩するだけでも、スマホは必ず携帯することにしています。

 今、スマホを使えば聴覚や言語に障害がある人でも文字入力などで119番通報できる事前登録制のシステムが全国で広がりつつあります。私も既に登録はしていますが、まだ使ったことはありません。使い勝手が改善されて、どんな障害がある人でも自由に通報できるようになれば、と願う一方、パニックになれば冷静に機器を扱えるかというと誰もがそうではないでしょう。近所や地域の人とのつながりも大事にしたいです。

 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

=2019/01/10付 西日本新聞朝刊=

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