「才能を持たない人」はどう生きる?「人生100年時代」のための教科書

 80歳の時に初めてPCを買い、90歳で人気ブロガーとなった女性の著書を読んだことがある。「なんて行動力だ」と驚いたものだが、これからは「六十の手習い」ならぬ「七十の手習い」「八十の手習い」も珍しくなくなるかもしれない。本書を読むと、そう実感を持って思えてくる。

 本書の著者は第一線で活躍する研究者であり、経営者、筑波大学学長補佐、メディアアーティスト等々といった多くのわらじを履く落合陽一氏。科学技術とアートを組み合わせ、「現代の魔法使い」として最先端のサイエンスに携わる著者によれば、「人生100年時代」の現在、これまでのような人生計画は意味をなさない。誰もが一生学び続けることが必要になるという。「そのために、どうすれば社会に出ても学び続ける意欲を持つ人を育てられるのか」という問いへの答えが3章にわたって提示されている。その多くが、既存の価値観を覆すものだ。

 そのひとつが、「『好きなこと』をいくつも展開して、組織に頼らずお金を稼ぐ」という生き方。飛び抜けた才能を持っていなくても、総合力で勝負することでいくらでも食べていける可能性があるのだ。たとえば、イチゴ農家になってライブコマース(動画をライブ配信し、商品説明を行う)をしてもよいし、音楽が趣味ならバンドを組んでパトロンを募り、会費を集めるシステムを作ってもよい。昔はプロになるか諦めるかの二択しかなかったことでも、今の時代ならその中間を選ぶことができる。

 また、「学問を始めるのに適性年齢はない」という。社会に出てからの方が人生ははるかに長いし、60歳で職を辞しても余生は40年もあるのだ。学生時代に学んだことは、あっという間に役に立たなくなってしまうだろう。
それを踏まえ、政府は2017年に「リカレント教育」の拡充を決めた。リカレント教育とはITや食、コンテンツなど、仕事への活用につながる社会人向けの「学び直し」を指す。こうした機会を利用することで、楽しみながら知識や経験をブラッシュアップしていくことができる。

 「生涯勉強し続けるなんてムリムリ!」と思う人もいるかもしれない(特に学生時代、勉強が苦手だったら)。しかし学生時代の画一的な学びとは異なり、自分に合った勉強法をいくらでも選べる。つまり、私たちには常に、何歳になっても、「何にでもなれる」という希望があるのだ。


出版社:小学館
書名:0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる学ぶ人と育てる人のための教科書
著者名:落合陽一
定価(税込):1,404円
税別価格:1,300円
リンク先:https://www.shogakukan.co.jp/books/09388645

 西日本新聞 読書案内編集部

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