戦死した2人の叔父を思い…長崎の79歳、貼り絵に込める願い

西日本新聞

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「絆」をテーマにした宿輪さんの貼り絵作品

奈留島の中心部に開いたスーパーの写真を持ち、笑顔を見せる宿輪弘子さん

 五島市・奈留島の宿輪弘子さん(79)は通所先のデイサービス施設の壁に、写真やシールで作った貼り絵を飾っている。数カ月に1度、新作と入れ替える。テーマは「地域の絆、永遠の平和」。大戦で命を失った2人の叔父を思い、手掛ける作品は「温かみにあふれている」と職員や利用者に好評で、笑顔を誘う。

 きっかけは5年前、腎臓を悪くして福江島の病院に入院した時。数カ月に及んだ病院での暮らしで生と死を見詰め、命の重さや生きる大切さをかみしめた。

 院内ではリハビリを兼ねて貼り絵や塗り絵にいそしんだ。ふと、子どもの頃に感じたことを思い出す。「絵を描けるということは、平和であるということ。絵は人を幸せにしてくれる」

 70年ほど前にさかのぼる。絵が大好きで、小学校の図画コンクールで何度も表彰を受けた宿輪さん。モチーフにする動物や花に心を和まされ、自然と笑顔になれた。絵を見た人も、笑顔になった。「絵は心を磨いてくれる、平和の象徴」というフレーズが、ストンと心に降ってきたという。

 背景には、2人の叔父の存在があった。いつも笑って「ひろこ、ひろこ」とかわいがってくれた2人は徴兵され南方戦線を転戦。パプアニューギニアで亡くなり、骨になって帰ってきた。「戦争は殺し合い。絶対にしてはいけない」と子ども心に意識した。誰かの笑顔を見ると、「幼い私に優しく声を掛けてくれた2人の叔父の顔が浮かんだ」。

 終戦から20年が経過し、夫の正人さん(86)と結婚。小売店を経営し、島の中心部にスーパー「ハローまいづる」を開いた。多くの買い物客でにぎわったが、正人さんが体調を崩し、2000年に店を閉めた。商工会長を務めた正人さんはその間、島に新たな郷土芸能を作ろうと、海に生きる人々を勇壮に表現する太鼓芸能「鳴神太鼓(なるがみだいこ)」を仲間と創作。秋の例大祭では「子どもみこし」の制作費を寄付した。家族で懸命に働き、地域に貢献した。

 自身の病気がきっかけで、立ち止まってゆっくりと人生を振り返ったとき、思い出したのが絵であり、それがもたらす笑顔だったという。

 習字もたしなむ宿輪さんは、正人さんと一緒に地域の絆を強めることに努めたいと願い、世界文化遺産でもある「江上天主堂」など美しいと感じる島の風景の文字を半紙に書く。そうして出来上がった作品は施設に飾った後、友人たちにプレゼントする。

 「作品を見た人が、人の温かみ、島の豊かな自然や歴史、多くの魅力に気付いてもらえればうれしい」。そう話すと、宿輪さんは笑顔を見せた。

=2019/01/24付 西日本新聞朝刊=

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