牧村三枝子、異色の新曲「歌一輪」 我が身重ねて「人生応援歌」

西日本新聞

 大ヒット曲「みちづれ」リリースから41年。男女の間の重い物語ばかり歌ってきた牧村三枝子が3年10カ月ぶりに昨年8月に出した「歌一輪」は、“色”も“恋”も出てこない明るい印象の楽曲だ。しかし、〈北の大地で産声あげた〉と始まる歌は、中学卒業と同時に北海道から上京し波瀾(はらん)万丈の歌手生活を送った彼女にとって、人生を振り返る重みを持つ作品となった。

波瀾万丈の歌手生活歌う

 最初にスタッフから提示された新曲についての情報は「歌一輪」という題名のみ。牧村が求めたのは「ふるさとなど、素朴な感じを入れてほしい」ということだけだった。〈心が折れそな日もあった 電話の向こう母の声〉〈座右の銘と父親の 言葉はいつも胸の中〉。出来上がってきた歌詞を読み、牧村は驚いた。そして涙が出てきた。

 「お父さんとお母さんに家を建ててあげたいという思いで北海道から出てきて…」。そこには今年47周年を迎える牧村の歌手人生、命に関わる大病も患った波瀾万丈の半世紀がつづられていた。歌うと故郷の風景や両親の姿が脳裏によみがえる。昔から親交がある渡哲也からは「ミーコ(牧村)そのままだな。泣いてしまって歌えないんじゃないか」とも言われた。

 だが、作詞家やスタッフに「これ私の歌ですよね」と尋ねることはなかった。「確かめると私だけの歌になってしまう。聴く人それぞれの歌になってもらえれば、と考えた」と牧村は説明する。牧村でなくとも、ハーモニカを入れてゆったりとしたメロディーは疲れた心を温かく包み込んでくれる故郷を、歌詞は人生や家族の愛を、思い出させる。

 「私がただ幸せだけできていたら、この歌は歌えなかったかもしれませんね」。山あり谷ありの人生だったからこそ歌える。そして、それを一人でも多くの人に共有してほしい。「誰にでも経験があることが描かれている。だから娘を嫁がせるお父さんにも歌ってほしいし、学校のコーラスでも歌ってほしい」

 「新鮮」と自ら評する「歌一輪」。3年後に迎える50周年に向け、ベテラン演歌歌手は大きな花を一つ手に入れた。

=2019/01/25付 西日本新聞夕刊(娯楽面)=

PR

文化 アクセスランキング

PR

注目のテーマ