人工哺育のラッコ7歳に マリンワールド海の中道の「マナ」 繁殖への期待大きく

西日本新聞 ふくおか都市圏版

 福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」で25日、人の手で育てられ、無事に7歳になったメスのラッコ「マナ」の誕生会が開かれた。約100人の観客が見守る中、マナはなかなか指示通りに動かず、飼育員を困らせる場面もあったが、愛くるしい姿を見せてくれた。国内のラッコは今や8頭のみで、人間社会と同じく少子高齢化が進んでいるという。人工哺育(ほいく)の唯一の成功例である最年少のマナには、繁殖への熱い期待も寄せられている。

 マナは2012年1月25日に生まれた。体調が悪化したため、生後11日目に母親ラッコの「マリン」から離され、人工哺育に切り替えられた。当時、飼育員だった営業課の土井翠さんはこう振り返る。「初めてのことで、全て手探りでした」

 ラッコは生後しばらくは母親のおなかの上で育つが、マナは海洋動物課の飼育員16人が24時間体制で見守りながら世話した。1時間ごとの検温は欠かせず、体温が下がってくると体が硬直し、上がってくると脱力状態になっていたので、特に注意が必要だった。

 ミルクも試行錯誤の連続。当初は犬用の粉ミルク、次は猫用を与えてみたが、下痢が続いた。このため、米アラスカの保護センターに問い合わせ、イカや貝を細かく刻み、さらに裏ごしして生クリームや低脂肪乳、ビタミン剤と混ぜて与えたという。「母親が普段食べているものを与えることで、飲む勢いも良くなった。このときはほっとした」と土井さん。

   ◇    ◇

 母親マリンはマナの出産後にも子どもを産んだが、残念ながら1カ月もたたずに死んでしまった。マナ以降、国内の繁殖は成功していない。

 土井さんは、背景には人間と同様の「核家族化」があるのではないかと考えている。母親ラッコは、出産、子育てを経験して相談相手になれる祖母や母親、きょうだいがいない中で、心理的にも不安な状況になってしまうというのだ。海洋動物課の槙野宏保課長は「個体数が減って核家族化する前に解決する方法もあったはずだが、後の祭り」。その上で、マナには「飼育員の指示通りに動かなくてもとにかく元気でいて、できれば子どもを授かってほしい」と願いを託す。米国の保護政策でラッコの輸入は規制されているためだ。

 マリンワールドには一時、7頭のラッコがいたが、今はマナと11歳のオス「リロ」の2頭だけになった。マナの体重は22キロ、健康状態は良好という。この日、氷で固められたイカの「バースデーケーキ」を与えられたが、リロに食べられてしまったマナ。それでも2頭で仲むつまじく、元気な様子に客席から温かい視線が注がれた。

=2019/01/26付 西日本新聞朝刊=

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