統計不正拡大 国の「屋台骨」を揺るがす

西日本新聞

 この国を支える屋台骨は、本当に大丈夫なのか。そんな危機感すら抱かざるを得ない。

 統計不正問題が底なしの様相となってきた。厚生労働省の毎月勤労統計を巡る不正調査を受け、各府省庁が56の基幹統計を点検した結果、4割に相当する22統計で計31件の不適切な処理をしていたことが判明した。

 驚くべき実態である。公表した総務省は「毎月勤労統計のように国民生活に影響する重大な事案はない」と説明するが、認識が甘くないか。不適切処理だった22のうち21統計は、計画通りに集計・公表しないなど統計法違反の疑いがあるという。

 基幹統計とは、法に基づいて国が実施する統計のうち、総務相が指定する特に重要な統計だ。行政の政策立案はもとより、民間の企業活動から研究分野まで幅広く活用されている。

 いわば国の姿を多様な物差しで測り、客観的な数字で包み隠さず表すものだ。その数字が「怪しい」となれば、政府の信頼が傷つくのは当然だろう。

 不適切処理をしていた官庁は7省に及ぶ。財務省の法人企業統計には損害保険業に関連する3項目の掲載漏れがあった。経済産業省は商業動態統計で調査対象を変更する際に総務相への申請を怠っていた。国土交通省の建設工事統計では、大手を対象とした調査で事業者が報告したデータの一部に誤りがあり、確認作業も不十分だった。

 統計を所管する総務省も例外ではない-というから深刻だ。住宅・土地統計や経済構造統計で一部の調査項目を集計・公表していなかった。「総務省よ、おまえもか」の惨状である。

 現段階では厚労省の毎月勤労統計のように、失業保険や労災保険の過少給付といった国民生活への直接的な影響は確認されていないという。

 だからといって「単純ミス」では済まされない。統計の持つ意義や影響力に思いが至らず、漫然と前例を踏襲したり、誤りを見過ごしたりした姿勢は大同小異と思えるからだ。

 総務省は、有識者の統計委員会に専門部会を設け、基幹統計以外の233に及ぶ一般統計も含めて再発防止策を検討するというが、政府全体でもっと危機意識を高める必要がある。

 統計不正の闇は深い。厚労省の特別監察委員会は「組織的隠蔽(いんぺい)はなかった」という報告書を公表したが、素案は厚労省職員が作っていた。不正に関与した職員への聞き取りも一部は職員が代行していた。「お手盛り調査」と批判を浴びるや、厚労相は再調査すると言いだした。

 国民が知らぬ間に霞が関で堆積した、うそやごまかしのうみを出し切らねばならない。

=2019/01/26付 西日本新聞朝刊=

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