運河が巡る市街地を重厚な鐘の音が包む…

西日本新聞

 運河が巡る市街地を重厚な鐘の音が包む。6年前、オランダ・アムステルダムに10日ほど滞在した。宿泊先の近く、ひときわ高くそびえる西教会の広場に行列ができていた

▼教会に用があるのかと思いきや、近接する「アンネ・フランクの家」の入場者。取材が空いた土曜日、列に並んでみた。さまざまな肌の色の人々の、いろんな言語が飛び交う列には、圧倒的に若者が多かった

▼アンネは1929年生まれのユダヤ人。ナチスの迫害を逃れこの隠れ家に2年余り潜んで書いたのが、世界的ベストセラー「アンネの日記」である

▼足音も立てられない潜伏生活の恐怖や家族への鬱憤(うっぷん)、淡い性の芽生え、将来の夢などを生き生きとつづっている。日記の表紙は少女らしい赤のチェック柄だった

▼その生涯に感動した福岡市の小6の少女がアンネのその後を追い、昨年11月の本紙「こどもタイムズ」に記事を書いていた。訪れたのはポーランドの「アウシュビッツ強制収容所」。秘密警察に捕まったアンネ一家が送られた先だ。きょうは、45年のアウシュビッツ解放から74回目の記念日である

▼アンネが次に移されたドイツの収容所で命を落とすのは同年2月末か3月初め。アウシュビッツに残れば、ひょっとして助かったかも…。と考えると歴史の皮肉を感じるが、生き延びたなら「人類のため働いてみせます」と記したアンネの思いは今も若い世代を突き動かす。

=2019/01/27付 西日本新聞朝刊=

PR

春秋(オピニオン) アクセスランキング

PR

注目のテーマ