【日日是好日】「駄目出し」に導かれて… 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞

 「無量寺便り」が届きました。無量寺様は、長野県塩尻市にある修行道場の堂長老師青山先生の御自房です。

 僧侶になってから正月三が日は師匠、参学師、得度をしてくださった授業師のために、お餅をお供えし一年の無病息災を祈願します。そのお餅を「壽餅(じゅびょう)」といい、1月4日にその一片をそれぞれの師にお送りします。「無量寺便り」は季刊で、ご住職の大仙さんと副住職の浄光さんが、「壽餅」のお礼の手紙に同封してくださいました。

 修行道場時代、私はお休みを頂くと無量寺様にお手伝いに伺いました。青山先生の御自房の生活を体験させていただくことは、いずれ羅漢寺に帰ったときに必要となると思っておりました。

 初めて伺った夏、大仙さんに畑の雑草取りを命じられました。「最近、手を入れてないから草だらけだけど、間違っても野菜を抜かないように。抜いたら承知しないよ」とくぎを刺されておりました。畑仕事をしたことがない私でしたが、一応野菜は分かるから何とかなるかと、緊張しながらも作業を終わらせました。

 大仙さんに畑を見ていただくと、「あっ! あんた、やったね。せっかく植えた枝豆取っちゃったね。はあ…。しょうがないね。罰! 食べなさい」。無残にも抜かれてしまったまだ実にもなっていない枝豆は、私だけの一品としてその日の昼食に上がりました。

 食卓をご一緒された青山先生が「なぜあなただけ違うものを食べているのですか」と不思議そうにお尋ねになられました。返答に困っていると、大仙さんが「罰です」と一言。せっかくの特別メニューの枝豆の味は…味わう余裕もありませんでした。

 それから幾度も四季折々の無量寺様の生活を体験させていただき、その都度鋭く率直に接してくださった大仙さんと浄光さんを参学の師と仰いでおります。

 踊りや演劇舞台の通し稽古では、観客席からプロのアドバイスを頂きます。「駄目出し」というやつですが、観客目線で仕上がり具合をチェックするのは大切なことです。人生においても「駄目出し」をしてくださる師匠は生涯必要であり、それによって自分を客観視できます。叱られたり注意されたりしたときは、落ち込んでへこんでしまいますが、冷静に振り返れば、足りない自分故なのです。

 仏法を正しく指導される師匠を正師といい、修行では正師を得ることが最も肝心だとされます。正師は、「駄目出し」でしかるべきこと、生き方を学ばせてくださり、授かる言葉は温かくありがたい。

 「無量寺便り」と一緒に、合掌童子で有名な画家佐久間顕一先生直筆の「今を生きる」と書かれた色紙を頂きました。大仙さんは手紙にこう書いてくださいました。「97歳の佐久間先生の『今を生きる』には重みを感じます。あなたもゆっくり長~く行きましょう」。参学の師のお言葉にはっとしてたまにはのんびりしてみようと深呼吸をしてみました。

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

=2019/01/27付 西日本新聞朝刊=

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