真珠が歴史を変えたことがある…

西日本新聞

 真珠が歴史を変えたことがある。1893年、天然の物しかなかった真珠の人工養殖に、御木本幸吉が世界で初めて成功した。当時は中東の海域が最大の真珠産地だった

▼日本の養殖真珠が世界市場を席巻するようになると、真珠が主要産業だったクウェート経済は大打撃を受けた。クウェートはやむなく石油の採掘を許可。大油田が見つかり、世界屈指の産油国が誕生するきっかけとなった

▼首元と両耳に真珠をきらめかせてコートを駆けた21歳の女性はテニスの歴史に新しい時代を開いた。大坂なおみ選手。全米、全豪と制覇して四大大会を2連勝。アジア勢で初めて世界ランキング1位に輝いた

▼他の宝石に比べて真珠は繊細。汗に弱いので運動選手はあまり身に着けない。大坂選手のネックレスとピアスは北海道に住む祖父の贈り物だそうだ。家族の愛情に包まれている安心感が、タフな試合を戦い抜く支えになっているのだろうか

▼全豪の決勝。勝利目前から逆転された。いら立ちを隠せず、涙も。だが短い休憩の後は穏やかな顔つきに。「全ての感情のスイッチを切った」。精神面のもろさを克服し、世界一の選手が誕生する瞬間を見せてもらった

▼真珠の「石言葉」は健康、富、清潔、素直…。攻撃的な試合ぶりとは対照的に、人柄は素直ではにかみ屋。1試合ごとに成長し輝きを増す大坂選手に、貝に包まれて大きく美しく育つ真珠がよく似合う。

=2019/01/29付 西日本新聞朝刊=

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