若者の自殺 苦境から救う手だて急げ

西日本新聞

 かつて3万人を超えた、その数は大きく減少している。ただし、未成年者については歯止めがかからないままだ。何が若い命を追い詰めているのか。さらなる分析と対策が必要だ。

 警察庁の速報値によると、昨年の自殺者総数は2万598人(前年比723人減)と、9年連続で減少し、1981年以来37年ぶりに2万1千人を下回った。九州で見ても、7県全体で2012年まで毎年3千人を超えていた自殺者数が、昨年は2170人(前年比103人減)まで減少した。

 自殺者はバブル経済崩壊後の1998年を起点に急増し、2011年まで毎年、全国で3万人を超える状況が続いた。

 国は06年に自殺対策基本法を制定し、国と自治体の責務などを明文化した。以来、総合対策大綱を定めて職場でのメンタルヘルス対策、地域での相談窓口や医療支援の拡充などを進め、それらが効果を上げてきた。

 その中で近年、深刻な問題としてあぶり出されたのが若い世代の苦境だ。年齢別でみると、自殺者の減少は、50代がピーク時の半数以下の3千人台になるなど中高年で目立ち、20代以下はそれほど大きくない。

 特に19歳以下は06年以降も500~600人台で変わらず、昨年1~11月も543人(厚生労働省調べ)と横ばい状態だ。このうち小中高生は増加傾向にあり、17年度は平成以降で最多の250人(文部科学省調べ)に上った。抱えていた悩みは進路問題、家庭不和、いじめなど多岐にわたる一方、半数以上の140人は動機不明で、周囲が悩みを察知できていなかった。

 実は、国がこうした若い世代に着目した対策の推進を掲げたのは17年7月(総合対策大綱の改定)からだ。従来、いじめや虐待の防止は叫ばれてきたものの、それらだけでは不十分という認識が広がっている。

 17年10月には、自殺願望の少女らが相次ぎ殺害された「座間事件」が発覚し、ネット空間が自殺やそれに絡んだ犯罪を誘発している現実に衝撃が走った。日本では10代後半~30代の死因の1位が自殺だ。これは他の先進国(1位は事故)と異なる深刻な傾向とも指摘されている。

 大綱は、こうした実態の調査研究をはじめ、SOSの出し方の教育、子どもの心の診療体制整備、有害ネット情報の削除など多くの施策を列挙している。裏返せば、若者に関する対策は緒に就いたばかりである。

 少子高齢化が進む中で、大人たちが閉塞(へいそく)感だけにとらわれず未来への夢や希望を発信していく。そうした営みも重要だろう。対策は行政任せにせず、社会全体で共有したい。

=2019/01/30付 西日本新聞朝刊=

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