製薬会社、医師に264億円 10万人中114人が1000万円超 「薬処方との関係、透明化を」

 非営利の調査報道メディアとNPO法人(いずれも東京)が、医師と製薬業界の関係を透明化しようと、製薬会社から個人として金銭提供を受けた医師の氏名や金額、講演料などの名目を検索できるデータベースを作成しインターネット上で公開を始めた。登録された医師は2016年度分で約9万8千人、金額は計約264億円。九州の医師17人を含む114人が1千万円以上を受け取っていた。

 ジャーナリストや大学生らによる調査報道の非政府組織(NGO)「ワセダクロニクル」と、医師らでつくるNPO法人「医療ガバナンス研究所」が1月15日に公開した。名称は「マネーデータベース『製薬会社と医師』」。同研究所の尾崎章彦医師(福岡県出身)は「医師への金銭提供は、法的には問題がなくても薬の処方などの判断がゆがめられ、国民の健康にも影響が出る可能性がある。データベースで検証可能にしたい」と話す。

 金銭提供を透明化する動きは2000年代に米国などで加速。国内の製薬会社でつくる日本製薬工業協会(製薬協)も11年に「透明性ガイドライン」を策定、加盟社は13年度分から医師名や金額をインターネット上で公表している。

 しかし閲覧には1社ごとに許可を得る手続きが必要で、印刷やダウンロードを制約している社もあり「どの医師に何社からいくら支払われているのか、全容の把握は事実上不可能」(尾崎医師)。今回のデータベースは約20人がかりで、製薬協の加盟社とその関連会社計77社の公表データを入力し、約1年4カ月をかけて完成させた。17年度分も作成する予定。

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 尾崎医師らが分析したところ、16年度に金銭提供を受けたのは国内の全医師の約3分の1に当たる約9万8千人。額は一部の医師に集中しており、100万円以上は約4900人。最高額は約2900万円で、1千万円以上受け取った医師の約8割が大学教授だった。薬剤の取り扱いが多い内科の医師が目立つという。

 支払い名目の約8割を占めたのは講演料の約220億円。講演会は、製薬会社が一般の医師向けに薬や治療法に関する知識を提供するために開くもので、地元の大学教授や学会の有名医師などが講師に選ばれる。

 福岡市の病院関係者は「講師は製薬会社が販売する薬の効能などを紹介し、薬の宣伝の場にもなっている」。16年度に約30回講師を務め計約250万円を受け取った九州の内科医は「講演会は現場の医師にとって貴重な勉強の場だが、製薬会社にマイナスになる話はしにくい」と明かした。

 医師が処方する薬は「医療用医薬品」と呼ばれ、国内での売上金額は年間約10兆円。薬の代金には国民の税金や保険料が含まれる。製薬会社の意向に沿って医師が高価な新薬の処方を増やせば国の医療費が押し上げられる懸念もある。尾崎医師は「製薬会社と医師の関係の透明化は税金や保険料の使い道のチェックにもつながる。本来は公的機関や業界団体がデータベースを作成すべきだ」と指摘している。

=2019/02/02付 西日本新聞朝刊=

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