学校図書館のハテナ?(1)司書の役割 ある一日に密着

西日本新聞

宇美小の図書館で児童が本を手に取るための工夫などについて図書委員と打ち合わせをする児玉恵さん(左)=福岡県宇美町 拡大

宇美小の図書館で児童が本を手に取るための工夫などについて図書委員と打ち合わせをする児玉恵さん(左)=福岡県宇美町

 小中高校の図書館(室)で時々目にする学校司書。子どもの活字離れや読解力不足が深刻化する中、近年その存在が注目されているという。そもそも学校司書にはどんな役割があるのだろう。地域を挙げて子どもの図書館利用を促す福岡県宇美町の小学校を訪ね、司書の一日に密着してみた。

蔵書1万4000冊を把握

 3学期が始まった1月中旬の平日午前8時すぎ。宇美町の宇美小で、司書の児玉恵さん(42)が図書館の鍵を開けて間もなく、児童約30人がどっと押し寄せてきた。お気に入りの本を選ぶと次々にカウンターへ。

 「パンパカパ~ン」「ジャーン」。突然、にぎやかな音が響いた。出所は本の貸し出しを記録したパソコン。借りた本の累計が50の倍数になると鳴る仕組みになっているという。1回に借りることのできる上限は3冊。200冊を達成すれば原則持ち出し禁止の本が1冊、借りられる特典もある。

 「特典は図書委員の子どもたちが考えたんですよ」と児玉さん。高学年の児童が務める図書委員は、図書館運営の大きな戦力になっている。どうすれば児童が本を読むか、いつも意見交換しているほか、貸し出し業務を任せることもある。

 「恐竜図鑑はどこ?」。児玉さんに男子児童が話しかけてきた。児玉さんは関連本が並ぶコーナーを案内し「絵が多いのはこっち、物語はこっち」。図鑑を手にした児童は「おー、プテラノドン」と目を輝かせた。しかし図鑑は持ち出し禁止。特典を伝えると「僕、あと何冊?」と明るい表情で尋ねていた。

 午前中の図書館には、休み時間や授業を早く終えた子どもたちの訪問が後を絶たない。「返したはずなのに、返却手続きが終わっていない」「ここ、破れてます」…。児玉さんの半日は慌ただしく過ぎていった。

読ませる工夫や授業支援

 児玉さんが宇美小で働き始めたのは3年前。正規職員としてほぼ毎日勤務する。同校図書館の蔵書数は約1万4千冊。今は、どこにどんな本があるのかすぐに分かるが「覚えるまでに丸1年かかった」という。

 必要と思う本がなければ近隣の中学校や町立図書館から取り寄せることもある。それを可能にしているのが、町の取り組みだ。

 宇美町は2009年度から「図書館を使った調べる学習コンクール」を独自に実施。子どもたちの図書館利用を推進しつつ、町内の5小学校、3中学校に1人ずつ司書を置き、8人は月2回、町立図書館で調べ学習に役立つ本などについて情報交換している。全小中学校の蔵書はデータベース化して日常的に取り寄せられる環境も整える。

 給食時間後、3年の学級担任が盲導犬の学習で使った21冊をまとめて返却に現れた。次に借りる本の予定を聞いた児玉さんに教員は「世界の国々を調べる授業があります」。昨年度、同じテーマで蔵書不足を感じて関連本を購入したことを告げた児玉さんは「町立図書館からも借りておきますね」と付け加えた。

「子どもと本をつなげる」

 掃除後のわずかな休み時間。児玉さんは図書委員と一緒に各学級への本の貸し出し作業を行っていた。風の又三郎や青い鳥などの名作を1人1冊、2週間ごとに学級内で回し読みしてもらう。「読書リレー」と名付けた試みだ。記憶に残った本などを紙に書いてもらい、それをとじるファイルも1人ずつにある。

 利用が落ち着いた午後4時ごろ、この日の総貸出数を眺めると、いつもより多い1664冊。児童数は約680人で1人平均2・4冊に上った。通常の貸出数でも1日約千冊という。職員室に移動した児玉さんは、新刊本を紹介したり、手書きの4こま漫画の4こま目のコメントを募集したりするなど、趣向を凝らした「図書館だより」の作成を午後5時すぎまで続けた。

 今、考えているアイデアは、自分ではなかなか選ばない本に触れてもらうための仕掛け。図書委員に協力してもらい、お勧めの本を2冊ずつ紙袋に詰めて「本の福袋」として貸し出す。縁起物として手作りのお守りも添える徹底ぶりだ。

 仕事を終えた児玉さんに司書の役割を聞いた。「その子に合った本を探り、子どもと本をつなげることですね」

学校司書、全国に2万人超 学校司書は、学校図書館法第6条で「置くよう努めなければならない」と規定されている。文部科学省によると、2014年5月1日時点で、全国の国公立と私立の小中高を合わせた計1万9817校(全体の55.4%)に計2万1302人が配置されている。

 学校司書になるには、必ずしも法的な資格が必要ではなく、募集要件は設置者により異なる。文科省によると全国の自治体が求める要件(複数回答)は、図書館法の定める司書の資格を有する(59%)、図書館の勤務経験(16%)、教員免許を持ち司書教諭講習を修了していること(15%)などで、資格や経験を求めない自治体も35%あった。

=2019/02/03付 西日本新聞朝刊(教育面)=