佐賀陸自ヘリ墜落から1年、住民癒えぬ傷 オスプレイ配備計画は着々

西日本新聞

 佐賀県神埼市で陸上自衛隊のヘリコプターが民家に墜落した事故から5日で1年を迎えた。現場周辺は、日常を取り戻したようにも見えるが、国の原因調査はなお続いている。地元からは一日も早い究明を望む声が上がり、いまだに心の傷が癒えない住民もいる。

 「みんな事故を忘れたいが、風化させたらいけない思いもある」。事故現場の丙太田(ひのえおおた)地区の区長だった松永順二さん(69)は、原因調査が進まない現状に複雑な気持ちを吐露する。

 昨年2月5日、陸上自衛隊目達原(めたばる)駐屯地(同県吉野ケ里町)所属のヘリコプターが民家に墜落し、乗員2人が死亡。民家は全焼し、中にいた女児が軽傷を負った。家族は転居を余儀なくされた。周辺住民によると、今は地区の行事に参加しているという。

 「早く原因を明らかにしてほしい」と願う一方で、松永さんは無力感もぬぐえない。「原因が分かったからといって住民は納得するだろうか。事故が起きた事実は変わらないから」

 現場から約150メートル離れた認定こども園の平尾道代副園長(51)は、職員室の窓から墜落の瞬間を目撃した。園の遊具や園庭にはヘリから漏れた潤滑油が降りかかった。駐屯地は現在、現場周辺の飛行を避けているが、平尾さんは「ヘリの音を聞くと今でもイメージがよみがえり怖くなる」と表情を曇らせる。

 原因調査は道半ばだが、国は昨年7月、事故で中断していた陸自オスプレイの佐賀空港配備計画を巡る佐賀県との協議を再開。山口祥義知事は翌8月、計画受け入れを表明した。

 松永さんは「原因が分からない中、知事の急な表明は意外だった。オスプレイも同じ機械だから、やはり事故が心配」と話した。

■事故原因の解明は難航

 陸上自衛隊のAH64D攻撃ヘリコプター墜落事故で、防衛省は陸自による事故調査委員会に九州大の後藤昇弘名誉教授ら2人の民間有識者を参加させ調査を続けているが、事故原因の全容解明には至っていない。

 事故調は昨年5月、4枚の主回転翼と機体の回転軸をつなぐ「メインローターヘッド」内部のステンレス製ボルトが破断し、主回転翼が分離したと推定する中間報告をまとめた。操縦や整備の過失はなかったとした。現在はボルトの材質や破断面、保管状況などの調査を続けているという。

 山崎幸二陸上幕僚長は1月31日の記者会見で「国民の生命、財産を守るべき自衛隊がこのような事故を起こし、大変申し訳なく思っている」と改めて陳謝。事故調はこれまで8回開いたが「ボルトの破断をいろんな角度から分析している段階で、まだ結論に至っていない。早く原因を解明したい」と述べた。運用停止中の同型ヘリについては「事故原因が明らかにならない限り、飛行再開はできない」との考えを改めて示した。

=2019/02/05付 西日本新聞朝刊=

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