BDF バイオディーゼル燃料 対象車減り、製造曲がり角 「次世代型」 試験走行スタート 佐賀市の天ぷら油リサイクル

西日本新聞

佐賀市役所に置かれた使用済み天ぷら油の回収ボックス。油の入った容器が並べられていた 拡大

佐賀市役所に置かれた使用済み天ぷら油の回収ボックス。油の入った容器が並べられていた

天ぷら油で走る佐賀市の市営バス。油の回収に協力を求める文字とイラストが入っている

 家庭で使われた天ぷら油を自治体が回収し、軽油に代わるバイオディーゼル燃料(BDF)にリサイクルして公用車に使う取り組みが岐路を迎えている。高性能の新型車両に大量に給油すると不具合が生じる恐れがあるとして、使用を旧型車両に限ることがあるためだ。公用車の更新が進みBDFの使い道が減ると、回収に協力する住民の意識に影響しかねず、新型車両に使える「次世代BDF」を開発する動きも出てきた。

 市営バスのエンジンがかかると、飲食店などで漂う天ぷら油のにおいがした。1月中旬、佐賀市交通局(同市)。車体には「使用済み天ぷら油の回収にご協力ください」の文字。給油されているのは、家庭から集めた天ぷら油を精製したBDFだ。

 市は2004年度以降、家庭や飲食店から天ぷら油などの廃食用油を集めてBDFを生産している。17年度は約12万3千リットルを回収し、BDF約6万2千リットルを生産、市営バスやごみ収集車など15台に使用した。

 車にBDFを給油する場合、軽油との混合率は5%以下にするよう揮発油等品質確保法(品確法)などで定められている。5%超は試験研究などで国に認められたケースのみ。一方、BDFを100%にすると法の対象から外れ、各事業者が自己責任で給油できる。

 市は当初から、ごみ収集車や市営バスにBDFを100%給油してきた。しかし、国の自動車排ガス規制が徐々に厳しくなり、これを満たす高性能の新型車両が発売されると、全国的にBDFの給油で不具合が報告されるようになった。市は公用車を更新するたび給油できる車が減り、18年度の使用は10台程度にとどまった。

 「古い車両に100%入れる際はエンジンや配管などの点検を徹底しているので問題ないが、新型車両が増えれば、給油する車は減らさざるを得ない」と市循環型社会推進課の田中和之係長は話す。

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 そこで市は17年度から、新型車両への給油を目指す「次世代BDF」の開発に乗り出した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主体となり、バイオ燃料製造の研究機関や企業が市の廃食用油を使って、軽油とほぼ同じ高品質なBDFを生産するプロジェクトという。

 18年度は市が主体となり、国の補助で次世代BDFの実証試験を開始。昨年12月には市営バスに次世代BDFと軽油を2分の1ずつ混合して給油し、試験走行した。走行や燃費、排ガスなどに問題はなかった。

 全国に先駆け、1997年度から天ぷら油を回収してBDFを生産し、市営バスやごみ収集車に使う京都市も試験研究に取り組む。2012~14年度に産学官で次世代BDFの開発に着手し、ごみ収集車などに100%給油して走行したが、支障はなかった。

 ただ、課題も浮き彫りに。製造コストが1リットル約1500円となり、軽油価格を10倍ほど上回ったという。

 現在は、従来型のBDFを市営バスやごみ収集車に使用している。ごみ収集車約100台にBDFを100%給油しているが、新型車両の導入が進めば給油量は減る。市によると、BDFを100%使用して車が故障してもメーカー保証は受けられないといい、担当者は「従来型のBDFを新型車両に100%給油するのは難しい。次世代型のコストを下げる技術が開発されればいいが」。佐賀市も同じで、導入はコスト面が鍵になるという。

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 BDF製造企業や自治体など約120の個人・団体が加わる「全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会」(東京)によると、新型車両への更新に伴ってBDFの使い道が減る悩みは、全国の自治体や企業が抱えているという。

 鈴木博・事務局主幹は「混合率5%以下で車に使うか、それとも発電用やごみ焼却の助燃剤、ボイラー燃料などにも使っていくか。自治体などの提供元と使う側の市民が、回収した廃食用油をどう有効活用するか、納得した上で進める必要がある」と話す。

 植物からつくられる廃食用油を活用するBDFは、二酸化炭素(CO2)排出削減に有効とされる。植物は成長時の光合成でCO2を吸収しており、車からCO2が出ても相殺される。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」も、今世紀後半に温室効果ガス排出を実質ゼロにすると掲げており、BDFの普及は世界の流れに合う。

 佐賀市の田中係長は「天ぷら油を捨てずに集めれば暮らしに生かされるし、環境保護にもなる」と語る。天ぷら油は捨てずに回収先へ。日々のひと手間が、大きな効果を生むはずだ。

=2019/02/06付 西日本新聞朝刊=

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